2022 Fiscal Year Research-status Report
国家間の紛争・敵対関係と同盟ネットワークの動態分析
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20K13431
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
佐桑 健太郎 青山学院大学, 国際政治経済学部, 准教授 (30802219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ネットワーク / 同盟 / 敵対関係 / 紛争 / 戦争拡大 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、これまで国家間の同盟と敵対ネットワークについて構築してきたデータのうち特に敵対関係に着目した分析に加え、同盟・敵対・紛争の関連を説明する理論モデルを構築して分析を進めてきた。それぞれの具体的な 内容と意義は以下のとおりである。 (1)敵対関係のデータを用いて、国際政治上の地位をめぐる敵対関係の発生、紛争への発展、および終結が地域によってどのように異なるかを調査した。データを分析した結果、他の問題(例えば領土)をめぐる対立とは異なり、地位をめぐる敵対関係は中東・北アフリカなどの地域で特に活発であったことがわかった。また、回帰分析の結果から、多くの国がある一定以上の国力を持っているような地域では地位をめぐる対立が発生しやすいことや、一旦発生したそのような対立は、複数の大国が共存していながらも力関係に明確な上下が少ない(つまり、局地的に突出した国が存在せず「群雄割拠」の状態になっている)地域ほど戦争に発展しやすいことがわかった。 (2)理論面では、偶発的・局地的な紛争が多数の国を巻き込んで拡大するメカニズムを分析するため、同盟と敵対関係のネットワーク上で起こる紛争拡大モデルを構築して基礎的な分析を行った。コンピュータを用いたエージェント・ベースのモデル(マルチエージェント・シミュレーション)による実験から、同盟ネットワークの密度が低くもなく高くもない「中程度」で、かつ敵対関係の密度がある一定の閾値を超える時に、最も早く紛争が拡散するという結果が得られた。 以上のように、これまでの理論・実証両面での研究から、国家間の同盟・敵対関係のネットワークがどのように生起して紛争と更なる対立を生むのか、また、そのように出来上がったネットワーク構造がどのように大規模な国際危機に影響しうるのかについての重要な示唆が得られたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の研究には順調な進捗があったが、その前の年度に新型コロナウイルスの影響などで進行が遅れた影響が残っており、全体としてはやや遅延している。そのため、課題研究の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2023年度は、これまでの理論・実証両面の研究成果を踏まえてさらに発展させ、特に理論的なモデル構築を中心に進める。また、これまでの成果を複数本の論文にまとめ、学術誌に投稿する作業を終えることを目標に研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
健康上の理由により学会出席を中止(論文は提出)したことなどにより、予定していた旅費の使用が大幅に減ったことが主な理由である。次年度は書籍・資料の取得・運搬費や計算機シミュレーションのための電子機器設備購入、旅費を中心に予算を使用することを計画している。
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[Book] Regions, Power, and Conflict Constrained Capabilities, Hierarchy, and Rivalry2022
Author(s)
William R. Thompson , Thomas J. Volgy , Paul Bezerra , Jacob Cramer , Kelly Marie Gordell , Manjeet Pardesi , Karen Rasler , J. Patrick Rhamey Jr. , Kentaro Sakuwa , Rachel Van Nostrand , Leila Zakhirova
Total Pages
293
Publisher
Springer
ISBN
978-981-19-1680-9