2021 Fiscal Year Research-status Report
紛争後社会における規範伝播の政治性に関する実証研究
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20K13439
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
小山 淑子 東洋大学, 国際学部, 准教授 (50800827)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 治安部門改革 / 規範伝播 / SDGs / ジョージア / コンゴ民主共和国 / 平和構築 / 国連 / 国際協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は過年度に実施したジョージアとコンゴ民主共和国の事例研究についての文献収集・精査と言説分析結果を取りまとめた。この際、昨年度行った学会発表の際などに受けた規範研究および治安部門改革の専門家からのコメントをもとに、当研究の理論面での課題を明らかにすることに努めた。 今年度の研究成果の一部は「武器と市民社会」研究会セミナー(2021年12月1日、オンライン開催)、広島市立大学シンポジウム Policing in Transitional and Post-conflict Countries (2022年3月15日、オンライン開催)にて発表した。ジョージアの事例研究成果の一部はRoutledgeより英文編著書の一章として出版した(“Non-state armed actors and state-building: The symbiotic relationship between paramilitary forces and the state in post-Soviet Georgia (1991-2012)”, in Hristov, J., Sprague, J. and Tauss, A. (eds.) The Political Violence of Capital: Paramilitary Formations in Global Perspective pp. 201-215 2022.01 Routledge)。 当該年度に執筆したSDGsについての研究成果も編著書の一章として年内にRoutledgeより出版される。この事例研究はで、治安部門改革に関して行っていた「ローカル・アクターと国際アクターとの間の関係性や相互作用に着目し両者がお互いにどのような影響を与えたかという因果的過程の追跡および検証」をSDGsに関しても実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジョージアとコンゴ民主共和国における規範伝播に関する文献収集・文献精査の結果、当初の研究計画で着目している治安部門改革に加え、持続可能な開発計画(Sustainable Development Goals: SDGs)推進取組が、当研究における理論構築に資することが新たに明らかになった。そのため、これまで治安部門改革に関して行っていた「ローカル・アクターと国際アクターとの間の関係性や相互作用に焦点を当て、両者がお互いにどのような影響を与えたかという因果的過程の追跡および検証」を、SDGsに関しても実施した。2年目に実施した関連国際機関関係者への聞き取り調査などをもとに検証を進め、研究成果を取りまとめた。こちらの研究成果は、英文編著書の一章として、2022年中にRoutledgeより出版されることとなった(“The labour rights norm diffusion process in Georgia between 2003 and 2019” in Bacon, P., Chiba M. and Ponjaert, F. The Sustainable Development Goals: Diffusion and Contestation in Asia and Europe forthcoming Routledge )。 2021年度以降も引き続き、研究成果を国内外の学会報告および論文出版などで公表し、研究を進める上での課題点を精査することとしたい。具体的には、治安部門改革およびSDGsに関して、規範伝播における国内外のアクターの関係性と相互作用について引き続き検証を続け、より精緻な理論的検討を目指したい。治安部門改革に関しては、東欧の若手・中堅研究者たちと共同体制が構築でき、現在、準軍事組織に着目した英文編著書について、年内の出版を目指して作業中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、事例対象国の政府や市民社会などの国内アクターによる取組に焦点を当てて調査分析を進めることができた。これにより今年度は、国際アクターとこれら国内アクターとの間の関係性や相互作用の分析に、本格的に着手することが可能となる。研究成果は、これまで出版済みと出版が確定したものを含め3点を英語で発表した。今後も引き続き、国内外の学会や出版を通じての積極的な発信を継続していく。 今後の研究方法については、コロナ禍の影響およびウクライナ情勢を加味した工夫を一層こらす必要がある。過年度中にはオンラインでの聞き取りを試験的に行った。そこでは、既に信頼関係(ラポール)が築かれている対象者にはオンラインでの聞き取りが成立することが判明した一方で、ラポールが十分に構築されていない対象者との聞き取り調査は、質問内容によっては依然として十全には行えないことも明らかとなった。この試験的オンライン聞き取り調査の実施により、現地調査の必要性、特に、インタビュー対象者と直接会い、研究に求められる適度なラポールを構築することが、政治的に機微な課題を主題とする当研究にとって重要であることが改めて確認された。研究が進捗するにつれて明らかになりつつあるのが、ローカル・アクター、ことに国内エリートたちのアイデンティティの変容がもたらす規範の伝播への影響である。従って、今後も引き続き、インタビュー対象者であるこうした国内エリートたちと直接会い、研究に求められる適度なラポールを切れ目なく構築する必要がある。オンラインによる聞き取り調査では、ニュアンスのある言質を収集・分析することは困難であったことは否めない。今後も現地への渡航が難しい状況が続く場合を想定し、オンラインでの聞き取り調査においても適切なラポートを築けるよう、質問面やアクセス面での工夫を引き続き継続していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、2021年度においては海外渡航を含む現地調査に係る経費の使用が行われなかった。コロナ禍による海外渡航への影響が漸減するに伴って可能となる、事例研究対象国であるジョージア(昨年度延期分)およびコンゴ民主共和国(今年度予定分)における現地調査費用として、当該使用額を計上するものである。
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Research Products
(8 results)