2020 Fiscal Year Research-status Report
Heterogenous worker flows and Japan's labor market
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20K13519
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
溝端 泰和 関西大学, 経済学部, 准教授 (60727121)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 労働状態間フロー / 日本の労働市場 / 人口動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の労働市場の労働フローデータを入手し、労働状態間のフローが失業率や非正規雇用比率に与える影響について研究を行った。研究においては、伝統的な就業者・失業者・非労働力人口という3つの労働状態間モデルを拡張し、正規雇用者・非正規雇用者・その他就業者・失業者・非労働力人口の5つの状態からなる遷移モデルを利用した。また労働フローデータは年齢区分別・男女別に利用できることから、それぞれのカテゴリーの労働フローデータについて同様の分析を行い、人口動態的な影響が労働市場に与える影響についても考慮している。 研究の結果は、以下の3点が明らかとなった。(1)日本の失業率の変動を説明する要因として入職率よりも離職率の影響が大きく、さらに離職率のうち非正規労働者の離職率がもたらす影響が最も大きい。(2)日本の失業率の変動を説明する要因としてほかに、労働市場への参加マージンの役割も無視できない。具体的には、失業者プールと非労働力人口プールの間のフローがいずれの年代・性別においても重要な役割を示している。(3)日本の非正規雇用比率の変動を説明する要因としては、正規雇用者プールと非正規雇用者プールの間の労働フローが合計で非正規雇用比率の変動の6割を説明していた。先行研究では非正規職が正規職に就くための足掛かりとなるかそうでないかという観点から、非正規職から正規職へのフローに関心が払われてきた。しかしながら本研究の結果は、正規職から非正規職への移動も同等の重要性を持つことを示しており、どのような経路でこのようなフローが重要になるかという新しい論点を提示するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた時間についての集計問題(time aggregation)や分散分解の手法を用いた分析はできず簡易な分析にとどまった。しかしながらデータについては、全標本だけではなく年齢区分別・男女別のデータも同時に入手し、全標本で行った簡易分析をサブカテゴリ―においても同様に実施することができた。こちらの分析は次年度予定していたものであり先取りした分析ができたため上記区分での評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は時間についての集計の問題(time aggregation)や分散分析の手法に基づいてこれまでの研究結果の妥当性について再検証する予定である。また正規・非正規を考慮した労働フローデータは2013年からしか利用できないが、労働状態を区別しないデータについては2000年以降利用できることから、これらのデータを用いて同様の分析を行いこれまでの結果を裏付けるような客観的エビデンスが得られないか検討したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症ウイルス流行に伴う各種学会・研究会のオンライン化により出張費など当初予定していた費目での支出がなくなった。今年度もすでに一部学会・研究会はオンラインとなり海外での発表も難しいことから、物品費やその他(英文校正費など)を中心に支出する予定である。追加的に発生した余剰資金は、申請額から減額されたことにより購入を取りやめた一部物品を購入することに当てる。
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Research Products
(1 results)