2021 Fiscal Year Research-status Report
Heterogenous worker flows and Japan's labor market
Project/Area Number |
20K13519
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
溝端 泰和 関西大学, 経済学部, 准教授 (60727121)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 労働フロー分析 / 二重労働市場 / 人口動態 / 景気循環 / 労働時間 / 時間集計バイアス / 動的分散分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、一年目に実施した労働フローデータを用いた分析を次の二点で精緻化した。一点目は、時間集計バイアスに対処するため、Shimer(2012, RED)で紹介されている固有値分解を用いた方法を試みた。分析の結果、本研究における五状態からなる遷移行列では、従来の三状態からなる遷移行列と異なり、非負で異なる実数の固有値を得ることが難しいとわかった。このため時間集計バイアスの修正は行わず、既存のデータを用いて分析することとした。続いて二点目として、非正規雇用比率の変動の分析にあたって、Elsby, Hobijn, and Sahin(2015, AEJMacro)において実施されている非定常状態下の動的分散分解の方法を試みた。分析の結果、一年目に実施した簡易分析とおおむね同じ結果を、全標本とサブサンプル(男女別・年齢別)の両方で得ることができた。 次に、米国のフルタイム労働者とパートタイム労働者について分析しているBorowczyk-Martins and Lale(2019, AEJMacro)を参考に、日本の正規・非正規労働者からなる二重労働市場の特徴についてストックの観点から分析した。具体的には、非正規雇用比率と景気循環の関係、非正規雇用比率と労働時間の関係、の二点から日本の二重労働市場の特徴について分析を行った。分析の結果、日本の非正規雇用比率は循環性を持たないこと、非正規雇用比率は労働時間の短期的な変動はほとんどもたらさず、長期的なトレンドに大きく貢献していること、が明らかとなった。いずれの特徴も米国のパートタイム労働者比率について得られている結果と大きく異なり、日本の二重労働市場の特異な性質であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた時間集計バイアスの修正や、非正規雇用比率の変動の動的分散分解は、全標本・サブサンプル(男女別・年齢別)の両方について実行できた。一方で、研究成果を論文に取りまとめるプロセスで、日本の二重労働市場の特徴についてさらなる考察が必要であると感じ、非正規雇用比率と景気循環の関係、非正規雇用比率と労働時間の関係についてそれぞれ追加分析を実施した。その結果、論文執筆の進捗が大幅に遅れ、研究会や学会における発表に進めていない状況である。このため、進捗については上記区分での評価としている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の分析結果の論文への取りまとめは引き続き進めていく予定である。論文への取りまとめが終わり次第、研究会や学会における発表を実施予定である。新たな研究としては、交付申請書の三年目の実施計画にあるとおり、ジョブサーチモデルを用いてこれまでの分析結果を再検討することを予定している。ジョブサーチモデルを用いた分析については、前年度のサーベイから、Borowczyk-Martins, Jolivet, and Postel-Vinay(2013, RED)やShibata(2020, BEJM)が役立つことがわかっている。これらの先行研究を参考に、日本の二重労働市場の特徴についてより掘り下げた分析ができればと考えている。
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Causes of Carryover |
論文執筆作業が大幅に遅れていることから、英文校正の支出がなくなったこと、および学会・研究会への出張旅費がなくなったことが主な要因である。研究費の残額が大きいため、補助事業期間の延長も考慮しながら、まずは上記の英文校正、出張旅費を中心に支出していく予定である。
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