2020 Fiscal Year Research-status Report
制度ロジック変革モデルの探求:東京起業エコシステムの形成プロセス研究
Project/Area Number |
20K13560
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
芦澤 美智子 横浜市立大学, 国際商学部, 准教授 (30715404)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 起業エコシステム / スタートアップ・エコシステム / ベンチャーキャピタリスト / 制度ロジック / 組織フィールド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、制度的環境の強い地域で新しい組織フィールドがどのように形成され発展するのかを、制度ロジックの変革とその変革を担う制度的企業家に焦点を置いて明らかにしていこうとするものである。主な研究対象は、2013年頃から形成が見られる東京Entrepreneurial ecosystem (EE)である。 研究1年目の2020年度に以下のような手続きが計画されていた。 東京EEのSaaS(Software as a Service)セクターで投資額でトップクラスのベンチャーキャピタリストA氏からFacebookデータの提供を受けて分析を行うこと。また、追加で二次データ分析とヒアリングを行い、データを属性によって分類し、時系列でネットワーキング分析を行うこと。この時系列データに、東京EE全体と調査対象ベンチャーキャピタリストそれぞれの実績データを照らし合わせて、東京EEの中で調査対象のVCが制度的企業家と言うに適切かを検討することである。 2020年度はおおむね上記計画通りに研究が進んだが、研究の結果、A氏を制度的企業家とする根拠データが得られなかった。そのため、2020年度の研究結果は、制度的企業家としてのA氏ネットワーキング分析という論理的構成にて論文をまとめることはしなかった。一方、東京EE形成の過程でA氏がベンチャーキャピタリストとして影響力を持つポジションに至るまでのプロセスを明らかにする研究としてまとめた。先行するEE研究では、ベンチャーキャピタリストが主要アクターであることは主張されているものの、そういった主要アクターがどのように出現するのかは明らかになっていない。従って今後の研究では、EE主要アクターの出現プロセスを明らかにすることで、スタートアップ・エコシステム形成(組織フィールドの形成)のメカニズム解明に寄与するとの方向を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画として提出した計画にそって研究を進め、研究1年目の2020年度はその手続きを全て完了し、国内学会発表(2020年12月、日本ベンチャー学会第23回全国大会、発表済み)、国際学会発表(2020年7月、36th EGOS Colloquium)、国際学会発表申し込み(2021年1月申し込み、37th EGOS Colloquium発表採択済み)、国内ジャーナル投稿(2020年2月投稿、現在査読中)を実施した。従って、手続き面では研究はおおむね順調に進展していると言える。 一方、データ分析を進めた結果、当初計画されていたことは必ずしも支持されない結論に至る部分があった。それは、東京EEのSaaSセクターで、ベンチャーキャピタリストが制度的企業家としてのポジションであることを十分説明することができないという部分である。なお、制度的企業家とは言えずとも、重要な影響力を起業家に与えるアクターであることは認められるものであり、研究の主軸を、東京EE形成の過程で、重要なアクターがどのようにして出現し、競合の中で影響力を持つポジションに至るのかを明らかにするとの内容に変更している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1年目で実施したベンチャーキャピタリストについての事例分析(Facebookデータによるネットワーキングの分析)の結果、特定のアクターが制度的企業家として東京EEの形成を主導したとの説明は難しいという結論に至った。従って、研究2年目の研究の主軸は、東京EEの形成において、主要アクター(ベンチャーキャピタリスト、アクセラレーター、インキュベーション拠点のコミュニケーター、ピッチイベント等)の出現プロセスと相互依存関係についての事例研究を中心とする。そして研究3年目には、本研究で明らかにしようとしている、新しい組織フィールドの形成・発展プロセス、その中でも特に、制度ロジックの変革メカニズムについてまとめていくこととする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で学会がオンライン開催となりました。一方で、研究に必要な機器類の整備が計画よりも多くなっています。
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Research Products
(3 results)