2020 Fiscal Year Research-status Report
How traditional gender norm is maintained in the process of commercializing intimate life
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20K13612
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
織田 由美子 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 特任講師 (10867716)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 市場創造 / 制度論 / 意図せざる結果 / ジェンダー / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、結婚や育児、介護等、プライベート領域の市場化において、伝統的なジェンダー規範が維持されるプロセスについて、市場で活用されるテクノロジーなど物質性の影響という観点から明らかにすることである。より具体的には、恋愛や結婚(「婚活」)、または家事に関わる実践が市場化され、普及する一方で、伝統的なジェンダー規範が維持されるプロセスを明らかにするということが目的であった。 このような研究目的に対し、本年度の研究計画においては、①先行研究のレビューとリサーチギャップの抽出を行うこと、②「実践(サービス)」の普及に関する事例として、「婚活」を活用した事例研究を行うことの2点を掲げた。 まず、①については、組織研究に関する国内外の関連論文、特に制度論、制度ロジック、翻訳、意図せざる結果、ジェンダー規範に関する論文を読み込み、そこで明らかになったリサーチギャップについて、②の通り「婚活」の事例を用いた研究を行った。具体的には、ジェンダー規範を変えようとする社会的な取り組みが、世の中に受け入れられていくプロセスにおいて、本来のジェンダー規範が維持されるプロセスについて、市場における企業やそこで提供されるサービスとの関連から明らかにした。これまでの研究では、実践が普及することとジェンダー規範の変化(温存)については個別に研究が行われてきた。これに対し本研究では、実践の急速な普及が、伝統的なジェンダー規範を温存する構造を内包している可能性について示唆し、これを意図せざる結果として明らかにした。このような研究を行う上で、主要概念として、社会学における「翻訳」という概念を活用し、「社会問題を解決しようとするアクターの取り組みが、どのようにして意図せざる結果をうむのか」について論文を執筆し、EGOS(European Group for Organization Studies)に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗については問題なく進んでいる。特に先行研究のレビューや海外ジャーナルへの投稿なども順調である。ただ、コロナ禍により海外の学会での発表が叶わなかった点は当初の予定と異なる点である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、現状は概ね計画通りに進んでいるが、今後については一部研究計画の修正が必要になると考えている。 2021年度より、家電の普及がジェンダー規範にどのような影響を与えるかについて、ロボット掃除機を用いた事例研究を行う予定であった。これを進めるにあたり、当初本研究では、テクノロジーを市場で調達すること(家事をお金で解決すること)に対する意図や矛盾した感情、また利用者の自宅での具体的な使用方法について詳細なインタビューや観察を含めた現地調査を行う予定であった。 しかしながら、コロナ禍により、利用者宅でのインタビューや調査は難しい状況にあるため、この点については研究の目的を変えないよう留意しつつ方向性の転換が必要になるかと考えている。 具体的には新聞雑誌、SNS等の分析は予定通り進めた上で、インタビューについてはオンラインでの実施への切り替えを検討している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は3点ある。 1点目は海外での学会発表の延期、2点目は勤務地の異動によるインタビューに係る交通費の変更、3点目は、消費者インタビューの実施方法の変更。 これらの理由により次年度使用額が発生したが、本予算については、2021年度の使用計画と合わせて、論文発表を行うための翻訳サービスの利用、インタビュー調査のため国内旅費、およびロボット掃除機の購入費用として使用する計画である。
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