2021 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉とソーシャルワークの理論乖離の克服に関する研究
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20K13749
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
直島 克樹 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (70515832)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / ミクロ・メゾ・マクロ / システム / 複雑系の科学 / ストレングス視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、研究目的の一つであるソーシャルワークに関する理論的側面について検討し、以下の点について明らかにした。 第一に、ソーシャルワークにおけるミクロ・メゾ・マクロの連動性に関する理論的側面が、地域福祉の推進という近年の社会福祉の動向と重なり、そのことが、改めて地域福祉の推進の意味を問い直す契機になる可能性が見出された。本来の地域福祉は、ミクロやメゾレベルの実践からマクロ的側面を問い直す機能を有しており、それはソーシャルワークとしての重要な側面であることが見出されたと考えられる。 第二に、ソーシャルワークのメゾレベルの実践の重要性が明らかになり、その理論的背景として、カオスなどの理論に基づく複雑系の科学がソーシャルワークにとって重要となってくることが明らかとなった。同時に、複雑系の科学の持つシステムの変容理論は、これまでのソーシャルワークにおけるシステムの安定性を志向した考え方を見直すものであり、現場での実践を新しく意味付ける可能性を有していることが見出された。 第三に、ソーシャルワークにおけるシステムの変容に関係している原理として、ストレングス視点が理論的に位置付けられることが明らかになった。ストレングス視点は、従来のソーシャルワークの持つ病理モデルとのバランスを取るといった言説で説明されることが多いが、システムの変容を理論的な焦点にしたとき、ストレングス視点がシステムのゆらぎを起こし、そのゆらぎが重なり大きくなることで状況を変革していく理論的意味を持つことが見出された。 以上のことが理論的に明らかになったことを踏まえ、こういったシステム変容の流れを実証的に示していくことが次の課題となってくることが見出された。また、そのことは、これまでの社会福祉理論がどのようにシステムの変容と理論的に結びついていくのかという点を検討していく土台形成となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目となる今年度においては、当初ソーシャルワークのミクロからマクロへの連動性に関する調査を実施予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、実際に訪問しての参与観察も含めたインタビュー調査を実施することが困難であったことが研究の遅れの一つの要因である。また、理論的な文献整理と考察についても、海外の文献の整理などに時間を取られ、ソーシャルワークに関する理論的な研究に関しては、学会発表並びに論文提出(現在査読中)ができたが、社会福祉や地域福祉の理論について整理した文献調査並びに論文作成については、難解な課題のため、遅れが生じており、現在進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる2022年度においては、ソーシャルワークのミクロからマクロへの連動に関するインタビュー調査を実施し、公表していきたいと考えている。すでに、インタビュー予定先への依頼を済ましており、今後日程を調整して進めていきたい。 また、社会福祉・地域福祉に関する理論研究の整理をさらに進め、学会等での報告に加え、すでに実施している地域の居場所研究での調査の理論的結びつきも明らかになってきたので、その研究結果も取り入れながら、検討を加え、本年度中に論文としてまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
2021年度の予算が余った主な理由は、新型コロナウイルスの影響もあり、インタビュー調査先との調整がうまくいかず、調査の実施ができなかったことが大きな理由である。また、学会報告もインターネットでの開催となるなど、移動経費がかからなかった。本年度に関しては、インタビュー調査を中心に、直接会ってのインタビューを複数回実施、また、インタビューにおける研究協力者への移動経費などにも使用する予定である。また、研究の進展に伴い、海外文献の必要性が出てきているので、その購入費用にも使用していく予定である。
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