2023 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉とソーシャルワークの理論乖離の克服に関する研究
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20K13749
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
直島 克樹 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (70515832)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | システムのゆらぎと変容 / 社会福祉内発的発展論 / ストレングス視点 / 地域福祉 / 地域の居場所 / こども食堂 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度においては、ソーシャルワークと社会福祉の理論乖離を埋めるためのキーとなる地域の居場所支援への調査をさらに進め、同時に、現代社会の特徴から、現状の「バネ」や「歯止め」となる社会福祉の論理について検討を深めることで、以下の点について明らかにした。 第一に、居場所を支援を進めるためのメゾレベルでの実践への参与観察、並びに関係機関も含めたグループインタビューを実施し、居場所を通じた支援が、ミクロレベルからマクロレベルへと連動していく実証的データをさらに蓄積することが出来た。特に、連動性をつくり出すつながりの場の構築が重要であり、その場があることで、ストレングスの視点が発揮され、権利を回復していくエンパワメントが図られることが明らかになった。 第二に、社会福祉が向き合うべき社会のあり様において、資本主義を単なる経済システムとして捉えるのではなく、政治・文化などの社会システムとして捉えることで、社会福祉が現状の「バネ」や「歯止め」として働きかける視点が文献研究より見出された。特に、現在の社会福祉の到達点として設定している地域福祉では、幸福を高める増進型地域福祉が提起されており、その具体化の一つとしての居場所は、これからの「社会的インフラ」として重要となってくることを明らかにした。例えば、「こども食堂」などの広がりや取り組みは、地域の内発的発展を開発し、社会福祉そのものを変えていく理論的道筋が明らかになった。 そして第三に、社会福祉の持つ変革の論理を、システムの「ゆらぎ」の創出へと結びつけ、そこにソーシャルワークにおけるストレングス視点、さらには社会福祉における地域福祉を位置付けることが可能であることが見出された。今後は、この変革の論理から、両者の理論乖離の克服を図っていくことが課題となることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
参与観察、インタビュー調査に関する分析が遅れ、それに伴い論文作成に遅れが生じているため。加えて、追加でのインタビュー調査の調整が遅れているため。 社会福祉に関する理論のまとめを進めているが、当初の予定より時間がかかっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度においては、昨年度の調査結果の分析を早急に進め、学会等で報告するとともに、論文としてまとめていく。また、よりデータの蓄積を図るため、居場所の参与観察やインタビュー調査をさらに進め、これまでの理論研究をさらに検討していくことで論文を作成し、これまでの研究成果をまとめていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度からの新型コロナによる移動制限等のため、調査計画が丸1年遅れていること、また、オンライン等の普及により、出張の頻度が減ったことが主な理由として考えられる。また、分析等の遅れもあり、成果等に関する印刷機器や備品等の購入も遅れていることも理由の一つである。2024年度は、必要となる追加調査を実施するとともに、研究成果をまとめていくための機器や備品等の購入を進めていく。加えて、研究成果を深化させていく理論研究に必要となる文献購入等も進め、研究成果の充実を図っていく。
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