2021 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカにおける市民性教育の受容に関する比較研究
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20K13907
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 未空 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (40848610)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ケニア / 市民性教育 / 平等 / 公正 / 試験問題 / カリキュラム / 中等教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東アフリカ地域を事例とし、市民性教育がいかに学校教育のなかで受容されているかを比較検討することを目的としている。2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」では、環境問題や難民・移民への対応など、国境を超えた協力が不可欠な課題を前に、「持続可能な開発のための教育」や「地球市民教育」が明確に含まれ、持続可能な開発のために教育の果たすべき役割が強調された。現在のアフリカ社会は、そのような国際アジェンダによる「市民性」の強調の影響下にある。しかしながら、内発的な動機に基づかないまま、外発的に生じた概念をその社会に取り入れることは容易ではない。これらを踏まえて、本研究が明らかにしようとする問いは次の3点である。第一に、現代のアフリカ諸国では「市民性」をいかに捉え、どのように教育に落とし込んでいるのか。第二に、その「市民性」はどのように学習者に届いているのか。第三に、それらは、国や社会の歴史的背景や現状に応じてどのように違うのか。 2年目にあたる令和3年度は、現地調査を基に上記の問い2を明らかにする予定であったものの、昨今の世界情勢につき渡航は困難であった。このため、1年目に続き、カリキュラムの分析および試験問題の検討を行った。その際、「市民性」という概念を幅広く扱い、ケニアにおいて、どのように社会における善や公正が認識されているかを検討することにした。明らかになったのは、ケニアでは資本主義経済であることとは裏腹に、アフリカ社会主義を肯定的に扱う記述が多かったことである。自由競争を是とするような記述はほとんどなく、むしろ税制による財の再分配や個人間のシェアによる経済格差の是正が肯定的に捉えられ、社会福祉を是とする記述が多かった。この福祉観は、主として一定水準以下の人々を助けることにあったが、差の問題そのものに焦点を当てた内容も多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初から現地調査が不可能であることが見込まれたため、あらかじめ文献調査に切り替えて取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、しばらくの期間は現地調査が難しいと思われるため、オンラインや教科書などから得られる情報を基に分析を進めていく。教科書は既に入手できているため、教科書の分析を進めると同時に、試験問題の分析対象も拡大する。
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Causes of Carryover |
COVID-19により現地調査を実施することができず、旅費の使用が少なかった。次年度以降、見込みがたてば現地調査を実施予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Exploring the Concepts of ‘(In)equality’, ‘(In)equity’, and ‘(Dis)parity’ in the National Curricula and Examinations of Secondary Education: A Comparison between the Cases of South Africa, Kenya, and Madagascar.2021
Author(s)
Sakaguchi, M., Ogawa, M. Rasolonaivo, A. R., and Sonoyama, D.
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Journal Title
Africa Educational Research Journal
Volume: 12
Pages: 49-62
DOI
Open Access
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