2022 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカにおける市民性教育の受容に関する比較研究
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20K13907
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 未空 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 助教 (40848610)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 市民性教育 / シティズンシップ / ケニア / 学校放火 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目にあたる令和4年度は、1年目・2年目に実施したカリキュラムの分析および試験問題の検討に加えて、教科書の分析および現代ケニアで急増している生徒による学校放火事件に関する報道資料および裁判所が公開する判例集の収集と分析を進めた。カリキュラム、試験問題、教科書の分析においては、「市民性」という概念を幅広く扱い、ケニアにおいて、どのように社会における善や公正が認識されているかを検討した。学校放火に関する分析においては、学校放火事件を生徒による政治的主張行為のひとつとしてとらえ、なぜ放火が起こるのかその特徴についての検討を進めた。 令和4年度は、とくに学校放火にかかわる分析を進めた。その結果、ケニアで現在頻発している学校放火は、意図的に他者を傷つける暴力行為というよりは、施設破壊を目的とするパフォーマンス的要素が強いことが示唆された。そしてそれは、一定程度の規模の集団に共有される不満に基づいて起こっていた。さらに学校放火は、特定の地域で連鎖して多発する傾向もみられた。つまり、個別の暴力行為というよりは、学校という制度に対する社会的な抵抗運動として捉える方が妥当だといえる。本研究からは、ケニアの学校放火事件を、若年層の暴力的傾向や無規律によって生じるものと捉えるよりも、むしろ、寮制校や権威主義といった閉鎖的空間に対する抵抗として解釈していく必要があるといえる。なぜなら学校放火の根底には、自身の権利や居場所を脅かされることに対する不安があると考えられるためである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の影響などにより、引き続き現地調査は困難であったものの、学校放火事件に着目し、オンラインから得られる新聞報道資料や判例集の分析に着手することにより、当初の計画の分析手法とは異なるものの代替の方法によっておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
資料の収集および分析を進めるとともに、英語・日本語による論文執筆を行い、研究成果の公開を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度は、妊娠に伴い、当初予定していた現地調査や学会発表を実施することができなかった。このため旅費をほとんど使用しておらず、使用次年度への繰り越しが多くなった。
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Research Products
(2 results)