2022 Fiscal Year Research-status Report
生態学的マルチシステムで捉えた子どものレジリエンスの促進要因に関する縦断的検証
Project/Area Number |
20K13945
|
Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
越智 真奈美 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (00749236)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | レジリエンス / 子どもの健康格差 / 子どもの貧困 / ライフコース / 縦断調査 / 施策評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、貧困に起因する社会的不利に対し、これらに適応し良好な状態を保つ子どもの能力(レジリエンス)に着目する。子どものレジリエンスを防御・促進する要因について、家庭や地域、学校における要因の経年的な影響を定量化することを目的としている。これにより、貧困などの不利な状況にあっても、この負の影響を防御し、子どもの良好な健康や発達を促進する要因について、家庭や地域、学校における有効な対策の可能性を検討する。 本年度4月より研究を再開した。昨年度の研究中断期間にも、研究協力自治体であるA区では区立小学校1年生全員を対象とした生活実態調査を実施していた。本年度は2015年から継続している、保護者と子どもに対する縦断調査の対象児童が中学2年生となり、学校を通じた悉皆調査としては最終年度であった。新規調査項目として、保護者へは新型コロナウイルス感染の既往やワクチン接種の有無、テレワーク実施の有無を加え、児童へは最近の関心事や好きな本のジャンル、友人とのコミュニケーション頻度、児童による家族の介護やケア、身の回りの世話などの有無を加えた。 また昨年度までの調査データを用いて、分析と論文執筆を進めた。学校のソーシャルキャピタル、および親以外にロールモデルがいることは、小学4年生時点でのレジリエンスが高い方向に関連し、この関連は小学1年生時点でのレジリエンスの影響を除いても同様だった。また女児ではロールモデルではなく、サポートしてくれる大人の存在がレジリエンスと関連していた。また朝食を食べない児童は小学4年生時点で境界型糖尿病のリスクが高く、この関連は特に過体重児において顕著であったことを報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究実施期間では、前年までに収集した縦断および横断データを用いた分析と論文の執筆を進めた。昨年度は研究代表者の産前産後の休暇、育児休業の取得による補助事業中断期間としていたため、その間に計画通り実施されていた区立小中学校における調査のデータについて把握と分析に努めた。
新型コロナウイルス感染拡大の影響から、A区担当者や他機関の研究者との頻繁な打ち合わせが難しい状況が続いていた。また、前年度までに実施した縦断調査データを用いて、子どものレジリエンスに関わる学校および地域の要因を分析し、学会および学術論文にて公表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引きつづき調査協力自治体における新型コロナウイルス感染対策に配慮しつつ、区内地域活動についての情報収集を検討する。また本年度のコホート調査学年は中学2年生であり、区立学校を通じた縦断調査としては最終学年となった。小学1年生から6年生までの縦断データと、定点観察を行ってきた小学1年生のデータを整理し、地域の経済格差や地域ごとの活動が、子どものレジリエンスや精神的健康にどのように関連するかを検討する。またこれまでの調査全体を踏まえ、地域自治体で実施可能な子どもの健康格差対策の提案を行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い対面での調査打合せを控え、また学会発表のための移動を制限したため、交通費や旅費を使用しなかった。今後の感染状況を踏まえ、これらの活動は再開予定である。
|
Research Products
(3 results)