2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13973
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
山内 敏男 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (70783942)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 災害レジリエンス / 歴史学習 / 教訓 / バイアス / 語り |
Outline of Annual Research Achievements |
防災に限定せず,偏見や差別といった形で露呈したバイアスに着目し,歴史教育が現代社会への問題提起と解決にかかわる資質,能力の育成にどのように寄与するか,その方略を検討し,同時に歴史から学ぶことの教育的意義を析出することを目的とした研究を行った。具体的には,①過去と現代との類似性,継続性を見い出して学ぶ意味を高め,②個人,社会に立ち現れたバイアスを見抜き,③規範を問い直す資質能力を育成することにに着目した。 ①については,学習者が現在主義に陥りやすいことに留意しつつ通時性があるかどうかの判断材料とすることで,過度な現在主義を抑制すること,②では,通俗道徳にかかわる規範を手がかりにして過去のバイアスの実態や影響を現代社会における文脈に位置付け,規範を問い直すことができれば,社会秩序のありようを実感しにくい現代社会においても通底するバイアスを顕在化させ,よりよい社会に向けた価値判断能力の育成が可能となること,③では,バイアスにより陥りやすい点を探索し,自己と社会との関わりをメタ的に捉え規範(社会)との向き合い方を問い直す,さらには自己言及や歴史的意義を導出することにより社会への参加観,期待感の高揚を目指すことが有用であることを明らかにした。 研究を進めていく中で,発災や復興に際し立ち現れた問題の共通点や相違点について追究させることで、社会構造の在りようを捉えさせることで,社会問題の変容について(例えば「語り」の変容)も学びの射程となることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大の影響により,博物館,図書館館資料の収集のための出張が長期間にわたって行えなくなったため,昨年度までに収集していた資料を中心とした,明治~大正期を中心とした通俗道徳に関わるバイアスを取り上げた考察を行うにとどまった。また,同感染症の影響によって授業実践の依頼が行えず,文献検索と研究史の整理に時間を費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から今後の研究について,防災,減災にかかわる社会の在りように着目し,例えば「なぜ,教訓や先人の知恵は生かされないのか」について問うことで,教訓や先人の知恵をメタ的に捉え直し,社会の在り方を構想,提案できる歴史学習の有効性について見通しをもつに至った。過去の災害における対策から導き出された教訓を吟味・検討することを通して,災害レジリエンスを高める授業内容・方法の開発及び検証に急ぎ着手する。
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Causes of Carryover |
本研究では研究費の多くが資料調査ならびに学会発表のための旅費である。COVID-19の影響により,引き続き出張が制限され,計画通りに予算を執行することができなかった。次年度では,研究計画を見直し,結果必要となる経費に旅費を適宜割り振りすることで,予算を計画的に執行したいと考えている。
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Research Products
(1 results)