2020 Fiscal Year Research-status Report
VR技術を用いた大学野球選手および指導者育成の試み
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20K14099
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
鵜瀬 亮一 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助教 (00793291)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | VR / 選手育成 / 指導者育成 / 状況認知 / 大学野球 / アイトラッキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,研究代表者がこれまで行ってきた野球競技熟達指導者の試合における状況認知に関する研究をもとに,【課題1】VR技術を用いて,熟達指導者が有する技術的視点や選手起用,采配などに関する状況認知(語り)とアイトラッキング(どこを見ているのか)を同期させた動画(以後,VR視界動画)を作成する.それらを【課題2】大所帯で活動する大学野球硬式野球部の2軍選手および将来指導者を志す選手に視聴させ,視聴前後の状況認知や視点ポイントの変化を検証する.なお,本研究の最終課題は,熟達指導者の直接的な指導を伴わない状況下でも技術論や野球観,采配に関する知見がより効率的に現役選手および次代の指導者へ伝承されるシステムを構築することである. 1年目である2020年度は,熟達指導者が指揮を執る野球の試合について,VR視界動画を作成した.それらを将来野球の指導者をめざす学生に視聴させ,その前後での状況認知の変化を検証した.その結果,VR視界動画視聴前は何も語っていなかった場面で,その影響を受けたと思われる状況認知が現れたり(=暗記的状況認知),視聴により自身の過去の状況認知を修正したり(=関連づけ状況認知),視聴から得た知識をもとに全く新しい状況認知を推論的に示したり(=推論的状況認知)する学生が現れた.本研究により,監督の直接的な指導を伴わない状況下でも,VR視界動画を用いることで技術論や采配に関する知見が習得される可能性が示唆されたため,次年度以降引き続き多くの学生に,多様なVR視界動画を視聴してもらい,その前後での状況認知と視点ポイントの変化について検証していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目である2020年度は,熟達指導者が指揮する試合のVR視界動画を全試合撮影し,1シーズン分のVR視界動画を作成することで,試合時期や天候,対戦相手との力量差などが異なる,多種多様なVR視界動画を作成する予定であった.新型コロナウィルスの影響により,部活動自体が活動停止になったり,試合数が例年より極端に少なくなった.また,感染拡大防止の観点から大学ルールにより,外来者の受け入れが厳しく制限され,予定していた被験者や研究協力者が入構できないことも多かった.そうした限られた環境内であったが,VR技術とアイトラッキング技術を融合させたVR視界動画を作成できた.一方,VR視界動画作成を進めていく上で,野球の試合全体を撮影し,そこにアイトラッキングによる視点を表出させた際,被写体(打者や投手)が小さく,アイトラッキング技術の有用性が思うように発揮できないといった課題も浮き彫りとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度VR技術とアイトラッキング技術を融合させ,VR視界動画を作成する際に出た課題(被写体に対するアイトラッキングマークのサイズ感)は,研究対象を「試合全体」だけにとどめないことで解決していく.具体的には,「投球指導」に特化したVR視界動画を作成することで,アイトラッキングの有用性がより発揮されるようにしたい.本研究の最終課題は,熟達指導者の直接的な指導を伴わない状況下でも技術論や野球観,采配に関する知見がより効率的に現役選手および次代の指導者へ伝承されるシステムを構築することであり,VR技術やアイトラッキング技術と野球競技の現時点での相性を見極めながら,今後も最終課題の解決に向けて,研究を進めていく.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で予定していた国内学会が中止あるいはオンライン開催となり,交通費および旅費が発生しなかった.また,感染拡大防止の観点から被験者となる部活動チームの活動停止が長引いたり,練習試合,外部被験者や研究協力者を招いての実験等が大学ルールにより制限されたため,人件費・謝金についても当初予定していた配分額を実現できなかった.
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