2020 Fiscal Year Research-status Report
見知らぬ他者への利他性を抑制する心理メカニズムの解明 生業に着目した検討
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20K14129
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺嶌 裕登 名古屋大学, 教育基盤連携本部, 特任助教 (10851967)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 利他性 / 文化 / 社会生態学的環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
文化心理学では、社会生態学的環境の差異が、個人の心理特性や国家や地域の社会規範や文化に影響を与えると想定されている。その中でも、社会生態学的環境としての稲作は、相互協調的・集団主義的な心理傾向の形成と結びついていることが示されている。本研究では、アジアの国家および地域を対象に、稲作を含む地域の主要な農業形態がそれぞれの国や地域の見知らぬ他者への利他性を規定すると想定し、検討を実施した。 令和2年度は、文献の収集やマクロデータの分析を通して、調査対象となる予定の国家・地域の歴史的な社会生態学的環境(農業形態)を整理し、本研究の理論的フレームワークの精緻化を行なった。その上で、申請者が過去に収集した研究データを本研究課題の理論的想定に基づき再分析した。その結果、社会生態学的環境が見知らぬ他者への利他性の地域差(南北インド間の地域差)に影響を与えていることが示された。具体的には、稲作地域である南インドで出生した人は、麦作地域である北インドで出生した人と比較し、見知らぬ他者に対する援助行動の動機付けが弱いことが示された。また、見知らぬ他者への援助行動に関する記述的規範に類似した地域差が認められており、南インドで出生した人は、北インドで出生した人と比べると、他者全般が見知らぬ他者への援助行動を回避する傾向があると考えていることがわかった。こういった行動意図や記述的規範の地域差は、親族への援助や友人への援助には見出されなかった。したがって、インド国内の社会生態学的環境の地域差は、見知らぬ他者への利他性にのみ影響を与えている可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本国内の地域差を検証するための調査を実施しようとしたところ、利用したクラウドソーシングサーヴィスの参加者プールでは、分析に必要なだけのデータを得られないことが明らかとなったため、予定していたデータの収集を完了できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
各地域に居住する参加者のプールが充実した調査会社へと依頼することで、中断しているデータの収集を完了し、その結果をもとに、より広汎な文化間比較研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に実施する予定であった調査において、使用予定であったクラウドソーシングサーヴィスの参加者プールでは、分析に必要なデータ数が集まらないことがわかり、中断した。そのため、予定していた金額については、新しい調査会社に依頼する際に使用する予定である。また、新型感染症の流行により、学会や渡航等に制限がかかり、そのために予定していた金額が未使用となった、これについては、次年度以降、こういった制限が解除された際に、使用する予定である。
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