2021 Fiscal Year Research-status Report
見知らぬ他者への利他性を抑制する心理メカニズムの解明 生業に着目した検討
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20K14129
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺嶌 裕登 名古屋大学, 教育基盤連携本部, 特任助教 (10851967)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 利他性 / 社会生態学的環境 / 稲作 |
Outline of Annual Research Achievements |
稲作が地域の文化や個人の心理に影響を及ぼすことを実証した先行研究では,主に,中国やインドを対象としてきた。これらの国では,国家内に,稲作が普及している地域と麦作が普及している地域が存在している。しかし,これらの国と比較し,日本は,歴史的にほとんどの地域において灌漑水稲耕作が実施されてきたため,国内の稲作地域と麦作地域の比較することはできない。しかし,歴史的には国内の各地域の自然環境や農業技術の差異から,稲作の普及や発展には地域差があった。そこで,本研究では,地理学の研究によって明らかにされた日本における地域ごとの稲作の普及率の差異に着目し,穀物の供給を稲作に依存している地域とそれ以外の地域に弁別し,日本国内の地域差を検証する調査を実施した。その結果,歴史的な稲作の普及率と個人の利他性に関連が存在することが示された。具体的には,非稲作地域と稲作への依存が弱い地域は,依存が強い地域と比較し,全般的な利他性が高くなっていた。この結果は,本研究計画において,これまでに実施してきた日本・インドの文化間比較およびインド国内の地域間比較の結果と同様に,稲作の普及した地域ほど,利他性が抑制されることを示すものである。ただし,過去の研究結果においては,稲作は特に見知らぬ他者への利他性を抑制する傾向があったが,本研究においては,そのような効果は認められなかった。この点については今後,さらなる検討が必要である。 以上の研究に関する成果を国内外の学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,国家間の比較と地域間の比較を通して,生態学的環境が一貫して文化に影響を及ぼすことを実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
より広範な国や地域を対象とした調査を実施し,稲作と利他性の間に頑健な関係が存在することを示す予定である。また,稲作が利他性に影響を及ぼす詳細なプロセスについても,探索的に検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
感染対策の問題から,海外渡航等ができなかったため,予定の支出を行うことができなかった。
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