2022 Fiscal Year Research-status Report
見知らぬ他者への利他性を抑制する心理メカニズムの解明 生業に着目した検討
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20K14129
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺嶌 裕登 名古屋大学, 教育基盤連携本部, 特任准教授 (10851967)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 利他性 / 文化 / 社会生態学的環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,各国における社会生態学的環境(伝統的な農業形態)と現在その国に居住している個人の利他性との関連を検討した。利他性については,国レベルのWorld Giving Indexデータ(見知らぬ他者への利他性,ボランティア活動の頻度,寄付額の多寡)を利用した。社会生態学的環境については,1960年代の農業統計に基づき,主食として扱われる穀物・根菜類等の生産において稲作が占める割合を国ごとに算出し,伝統的な農業形態における稲作の社会的重要性の指標とした。 分析の結果,見知らぬ他者への利他性は,稲作の社会的重要性と負の相関を示すことが明らかとなった。また,この相関は,各国の現在の1人当たりのGNIを統制しても,有意なままであった。一方,ボランティア活動の頻度や寄付額の多寡については,稲作の社会的重要性との間に有意な相関は認められなかった。以上の結果は,稲作に関する社会生態学的要因が,全般的な利他性ではなく,見知らぬ他者に対する利他性を抑制することを示唆している。また,本分析は国レベルの分析であるため,稲作の伝統が,農業に従事しない個人を含む社会全体に共有される利他性の文化的特性に影響を及ぼしている可能性を示すものである。 以上の結果は,社会生態学的環境としての稲作に関わる社会規範が,その社会における見知らぬ他者への利他性を抑制するという本研究計画の想定と一致するものである。しかし,想定通りの結果が得られたものの,統計的検定の効果量が大きくなかったことから,社会生態学的環境の指標に関しては改善の必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた各国の利他性の文化差を説明する要因として想定している社会規範を測定するための尺度の開発に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
文化差を説明する社会規範を測定するための尺度の開発の作成し,信頼性,妥当性を検証したうえで,地域間比較および文化間比較を実施する。
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Causes of Carryover |
予定していた調査を実施することができなかったこと,および海外渡航ができなかったため,次年度使用額が生じた。当該調査について,2023年度に実施する。
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