2020 Fiscal Year Research-status Report
認知行動療法的観点における機能の変化がひきこもり改善プロセスに及ぼす影響
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20K14199
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Research Institution | Tokyo Future University |
Principal Investigator |
野中 俊介 東京未来大学, こども心理学部, 講師 (90821736)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ひきこもり / 機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は,認知行動療法的観点からみたひきこもり状態の機能や理由等に関する先行研究を概観し,さまざまなひきこもり状態の機能や理由等のタイプや,それらの変化プロセスを整理した。そのうえで,まず,ひきこもり経験者3名を対象としたインタビュー調査を用いて,ひきこもり始めた時期,もっともひきこもり状態が重かった時期,もっとも社会とのつながりができた時期を基準として,ひきこもり状態の機能や理由等を尋ねた。また,質問紙調査を用いて,ひきこもり始めた時期および現在の社会的交流の程度や生活の質,精神的健康等を尋ねた。分析の結果,ひきこもり始めた時期やもっともひきこもり状態が重かった前後においては,対人関係からの回避や外出回避,苦痛や不快感情の緩和がひきこもりの機能の中心である一方で,もっとも社会とのつながりができた時期の前後においては,それらの機能に加えて安心や好きな活動の獲得等がひきこもり機能としてみられた。 また,ウェブベースの質問紙調査を用いて,ひきこもり始めた理由,およびひきこもりが継続せざるを得なかった理由を自由記述によって尋ねた。ひきこもり経験者98名からの回答を用いたテキスト分析の結果,ひきこもり始めた理由においては,「退職」や「仕事」,「結婚」や「出産」,「入院」や「体調」等という言葉が多く抽出された一方で,継続理由においては,「特に」,「仕事」,「自分」,「社会」等という言葉が多く抽出された。これらをコーディングしたところ,10個のカテゴリーに分類され,ひきこもり始めた理由においては,「体調不良」や「就労環境」,「結婚・出産」というカテゴリーが多くみられた一方で,継続理由においては,これらに加えて「満足」や「あきらめ」,「特にない」というカテゴリーも多くみられた。これらの結果は,ひきこもり機能が時期の経過によって変化する可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定していた半構造化面接による調査は,新型コロナウイルス感染対策の影響によって参加募集が困難になり予定していた参加者数に満たなかった。その一方で,この影響に対応するためにウェブベースによる調査を行い,今後の計画におおよそ支障がない成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に収集したテキストデータを用いて,ひきこもり機能をアセスメントする尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討する。また,1年間のフォローアップによって,ひきこもり機能の変化がひきこもり改善プロセスに及ぼす影響を検討する。
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