2021 Fiscal Year Research-status Report
認知的要求の推移にともなう注意資源配分の調整メカニズム
Project/Area Number |
20K14273
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
杉本 史惠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (10738917)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 注意資源 / 事象関連脳電位 / 予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、課題遂行中の注意資源配分の調整メカニズムを解明することである。昨年度までに得られたデータの解析結果から、外部から与えられた音に比べて、自らの連続的な動作によって変化した音に対する事象関連脳電位(Event-related brain potentials: ERP)の振幅が減衰することが示された。このERP減衰のメカニズムとして2つの仮説が考えらえる:(仮説1)自らが動作を行うことによって、その結果(音の呈示タイミングや周波数の変化)についての予測が生じ、予測と一致する音の処理に対する注意資源配分量が減少する。(仮説2)動作中は動作の遂行に対して注意資源が配分されるため、余剰の注意資源量が減少する。そのため、(音変化についての予測の有無にかかわらず)動作中に呈示される音の処理に対する注意資源配分量が減少する。これらの仮説を検討するため実験を実施した。操作条件では、実験参加者の連続的なハンドル操作に伴って純音の系列(0.4秒間隔)が生成され、その周波数はハンドル角度に対応して変動した(800-1800 Hz)。低頻度で逸脱音(400と2400 Hz)が呈示された。再生条件では実験参加者はハンドル操作は行わず、操作条件と同じ純音の系列が再生されるのを聞いた。純音に対するERPを条件間で比較したところ、再生条件に比べて操作条件で純音に対するN1、 P2、 N2振幅が減衰した。一方、逸脱刺激に対するP3振幅は再生条件に比べて操作条件で増大した。この結果は、自らの動作の結果についての予測が生じたことを示すことから、仮説1が支持された。本研究により、自らの連続的な動作にもとづいた予測によって注意資源配分が調整されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は、予測が注意資源配分量の調整に及ぼす影響を検討することを目標としていた。当該目標について実験実施、データ収集、データ解析を行い、論文を執筆中である。また令和2年度中に実施したデータ解析の成果を国際誌で発表し、関連研究分野において新たな知見を提供した。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる。ただし本研究課題の初年度(令和2年度)に、新型コロナウイルス感染拡大のため研究計画に遅れが生じた。そのため現在までの進捗状況全体をみると,当初の計画からやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
認知課題遂行中の注意資源配分の特性について、更なる実験データの蓄積を行う。得られた成果をできるだけ早く論文化するとともに、学会での発表を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題の初年度(令和2年度)に実験が実施できなかったため、研究計画全体に遅れが生じた。次年度使用額は、令和4年度に実施する実験への参加者の謝金支払い、脳波計測用品の購入、論文投稿や学会参加にかかる費用に使用する。
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