2020 Fiscal Year Research-status Report
ホモロジーコボルディズム群と指標多様体に関する研究
Project/Area Number |
20K14317
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野崎 雄太 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (40822648)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホモロジーコボルディズム群 / 指標多様体 / ホモロジーシリンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、整ホモロジー3球面の成すホモロジーコボルディズム群を指標多様体を通して理解することである。ホモロジーコボルディズム群は、高次元多様体の3角形分割と密接に関係があり、トポロジーにおける重要な研究対象である。具体的には、佐藤光樹氏(名城大学)と谷口正樹氏(理化学研究所)との共同研究において導入したコボルディズム不変量を中心に研究を進めた。この不変量は Chern-Simons 汎関数を用いて定義されており、その臨界点は平坦接続である。したがって臨界値の計算は、基本群の指標多様体の考察に帰着される。特に結び目に沿った Dehn 手術によって得られる多様体を考えると、その結び目のA多項式が重要となる。 今年度は特に8の字結び目に焦点を当てて研究を行ない、臨界値を多重対数関数で表す公式および超幾何関数で表す公式を得ることに成功した。これを用いて、複数の表現に対して Chern-Simons 汎関数の値を数値計算し、その振る舞いを観察した。 またホモロジーコボルディズムの特別な場合であるホモロジーシリンダーについても研究を行なった。佐藤正寿氏(東京電機大学)と鈴木正明氏(明治大学)との共同研究において、ホモロジーシリンダーの成すモノイドにYフィルトレーションを入れ、それに関する次数商のトーションを捉えることに成功した。さらに手術写像を1ループ部分に制限した写像の核を詳細に調べ、線対称な Jacobi 図の組が生成系を与えることを明らかにした。以上の成果をプレプリント(arXiv:2103.07086)にまとめ、現在投稿中である。また The 16th East Asian Conference on Geometric Topology などで研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目標の一つは「ホモロジーコボルディズム群が Seifert 多様体で(群として)生成されないこと」を示すことであった。しかし2020年11月に Hendricks, Hom, Stoffregen, Zemke が involutive Heegaard-Floer homology を応用して、これを証明したとアナウンスした。そのため若干の方向修正が必要となった。また新型コロナウイルスの影響で、対面での情報収集や研究打ち合わせが困難であったことも要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」において述べた命題「ホモロジーコボルディズム群が Seifert 多様体で生成されない」をより強めた命題「ホモロジーコボルディズム群がグラフ多様体で生成されない」に着目する。この命題も正しいだろうと予想されているが、Hendricks, Hom, Stoffregen, Zemke による involutive Heegaard-Floer homology を用いた証明はそのままでは適用できない。一方 Chern-Simons 汎関数による手法では、多重対数関数を用いた記述を援用することで、証明に近づけると考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより、対面の研究集会が中止され、また対面による研究打ち合わせも行うことができなかった。そのため、旅費を予定どおりに使用することができず、次年度使用額が生じた。 次年度は、ワクチン摂取により状況が改善されると見込んでおり、当初の計画どおりに次年度予算と合わせ研究集会への参加や研究打ち合わせに使用する計画である。
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