2023 Fiscal Year Annual Research Report
流速場と拡散ダイナミクスの相乗的な効果による拡散促進現象
Project/Area Number |
20K14370
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小谷野 由紀 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 助教 (50849643)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移流拡散方程式 / フォッカープランク方程式 / ランジュバン方程式 / 異常拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、時間的に往復する正味の移流をもたらさない流動場が実効的に拡散挙動に影響することを、フォッカープランク方程式や移流項付きランジュバン方程式を基に数値シミュレーションと解析計算によって明らかにしてきた。具体的な現象としては、拡散が促進される効果や異方的になる効果を明らかにした他、移流と拡散が競合することによりはじめて生じる移流効果を発見した。 上記の主要な結果に加え、最終年度は、アクティブな粒子が多数存在する環境下におけるブラウン粒子の挙動についても研究を進めた。この研究は酵素反応が起きている環境下でのブラウン粒子の挙動を観察した実験から着想を得ている。そこで酵素を形状が変化するアクティブな素子として、酵素を模した粒子とブラウン粒子からなる空間2次元多体系の数値計算を行った。また、酵素は2つの円形粒子をバネで繋いだダンベル状の粒子とし、バネの自然長を周期的に変化させることで形状変形を実装した。すべての粒子は排除体積を持ち、またランジュバンダイナミクスに従うとしてモデリングした。数値計算の結果、超短時間では他の粒子との相互作用がないため純粋なブラウン運動、短時間では粒子の混み合いの効果から亜拡散的となり、長時間経つと通常拡散に回復するといった、ガラス系で知られている鳥かご効果が確認された。加えて、酵素反応が起きていると拡散が大きくなり、通常拡散への回復も早くなること、亜拡散が起きているとき平均自乗変位は時間のα乗(0<α<1)となるが、この指数αが酵素反応の有無によって変化し、酵素反応が起きている方がαが大きい、すなわち通常拡散に近いこともわかった。また、粒子密度(混雑度合い)の影響についても実験と定性的に同じ結果を得ることができた。以上の結果はPhys Rev E誌に掲載が決定しており、出版準備中である。
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Research Products
(6 results)