2020 Fiscal Year Research-status Report
量子スピン液体と高次トポロジーの協奏による新奇相の開拓
Project/Area Number |
20K14371
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
溝口 知成 筑波大学, 数理物質系, 助教 (30821847)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高次トポロジカル相 / 多体効果 / 量子スピン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は高次トポロジカル相に関連した新奇相開拓・物性解明に関連して下記の研究を行なった。 (i) 平方根高次トポロジカル絶縁体の提案 近年、トポロジカル絶縁体を記述する模型に対して、その「平方根」を取ることに相当する操作を行うことで、元の模型のトポロジカルな性質を受けついだ新しいトポロジカル絶縁体を生成できることが明らかになった。この状態は平方根トポロジカル絶縁体と呼ばれ、注目が集まっている。本研究では、このアイディアを高次トポロジカル絶縁体に拡張し、「平方根高次トポロジカル絶縁体」の存在を提案した。具体的には、サイト修飾されたハニカム格子模型において平方根高次トポロジカル絶縁体が実現することを示し、その角状態の性質を明らかにした。本研究の成果は国際誌Physical Review Aに掲載された。また、同様の方法で平方根トポロジカル半金属の提案も行い、その成果は国際誌Physical Review Bに掲載された。 (ii) 高次トポロジカル相におけるクエンチダイナミクス 近年、少数系のクエンチダイナミクスを用いて、境界状態の観測によらずにトポロジカル相を特徴づける方法の開発が進んでいる。これに触発され、本研究ではこの方法を相互作用のある高次トポロジカル絶縁体に拡張した。具体的にはMean chiral quadrupole momentという観測量の時間発展からトポロジカルに自明な相と非自明な相を区別できることを、数値計算によって明らかにし、さらに乱れに対する頑強性も示した。本研究の成果は国際誌Physical Review Lettersに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に述べた2つの研究は、研究当初の計画にはなかったものであったが、高次トポロジカル相について新奇な研究の方向性を打ち出すことができた。成果の発信という観点では「研究実績の概要」で述べた(i)・(ii)の研究の内容はいずれも国際誌に掲載され、また(i)に関しては日本物理学会およびアメリカ物理学会で口頭発表を行うなど積極的に取り組むことができた。当初の計画であった量子スピン液体における高次トポロジカル相の研究については現在も進行中であるが、本年度の研究で得られた知見もその土台となることを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に行った「平方根」系やクエンチダイナミクスなどの新しい方向性の研究については、引き続き共同研究者とともに更なる深化を目指す。一方で、当初の計画であった量子スピン液体における高次トポロジカル相の探索についても、本年度に得られたダイナミクスの観点などを取り入れながら研究を進めたいと考えている。さらに、本研究の根幹をなしている、量子化ベリー位相を用いた高次トポロジカル相の特徴づけについても、より広範な適用に向けた研究を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
国内・海外の研究会参加のための旅費を見込んでいたが、コロナ禍によりオンライン開催となったために旅費が生じなかった。2021年度中には研究会が通常通り開催されるようになることを見込み、国内・海外の研究会参加及び共同研究者との議論のための旅費として使用する予定である。
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