2020 Fiscal Year Research-status Report
Four-body scattering theory on resonant core in muon catalyzed fusion
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20K14381
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 琢磨 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (40844965)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミュオン分子 / ミュオン触媒核融合 / 共鳴状態 / 双極子系列 / 輻射解離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、負ミュオン(μ)が核融合反応を媒介するミュオン触媒核融合(μCF)を、量子散乱理論検証の舞台として位置付けている。特に、電子雲中の準安定核のような,軽粒子を纏った小さな準安定量子系「共鳴コア」に着目し、その形成・崩壊過程を精密な理論計算から明らかにすることを計画している。本年度は、電子雲中でのミュオン分子共鳴コアのエネルギー準位・構造を四粒子計算によって明らかにした。二つの重水素核dとミュオンが結合したddμ分子は、dμ(n=2)+dのしきいエネルギー下に多数の共鳴状態が存在することが知られている。電子雲中では、ddμ共鳴状態はdμ-d間の双極子-イオン相互作用が電子によって阻害されるため、準位の変化や消失が予想される。本年度の研究により、高い振動状態に対応する共鳴準位は有限体積効果によって大きく不安定化するが、二原子分子的なdμ-de結合によって安定化し、準位の消失を免れることが明らかになった。さらに、ddμ共鳴状態の輻射解離過程の計算に研究を展開した。電子をまとったddμ共鳴状態の崩壊には、余剰エネルギーを粒子間の相対運動で共有する無輻射解離過程(オージェ遷移)と、光子(X線)を放出して解離する輻射解離過程が存在する。孤立したddμ共鳴状態では輻射解離過程の寄与が大きいことが知られている。本年度のコード開発により、複素座標回転法を基軸とした電子をまとったddμ共鳴状態の輻射解離過程の理論計算が可能になり、スペクトル構造が初めて明らかになった。当該コードは、水素化ポジトロニウム系における第二束縛状態の輻射解離スペクトル計算にてテストされ、十分に収束した結果を与えることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画当初予想された共鳴準位の消失が、二原子分子的なdμ-de結合によって抑制される効果は一つの大きな発見であり、励起ミュオン原子と分子の衝突の際、Vesman機構による共鳴分子形成において重要な役割を果たすと期待される。この結果は、ミュオン触媒核融合サイクルの見直しにつながる。また、電子が共鳴分子構造を収縮させる効果が新たに見出された。これは、電子によって、質量の大きな原子核とミュオンの複合系の構造が変化することを示しており、量子少数多体系の現象として興味深い。 計算コード開発の成果として、陽電子・水素負イオン系の共鳴状態の解離分岐比が散乱行列の解析によって求められることを実証した。この結果は、ミュオン分子dtμ系の共鳴分子崩壊における終状態の予言に道が拓けたことを意味する。 無輻射解離過程に加えて、複素座標回転法を用いることで多チャネルの崩壊過程を扱い、電子をまとったddμ共鳴状態の輻射解離過程の研究が可能になった。これにより、加速器実験との連携を進めることができ、解離スペクトルの測定に向けた研究連携が大きく前進した。実現すれば、共鳴コアの物理を理論と実験の両面から探究できるようになる。
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Strategy for Future Research Activity |
電子をまとったddμ共鳴状態の輻射解離スペクトルの全体像を計算する。孤立したddμ共鳴状態の輻射解離スペクトルについては知見が集まったので、これを基盤に、電子雲の寄与を議論する。解離スペクトルの構造に、核間波動関数の情報がどのように反映されるかを明らかにする。また、計算に取り入れる解離後の電子状態を増やしながらスペクトルの変化を分析し、共鳴コアからエネルギーが光子と電子、核間運動でどのように分け合われるかを考察する。 この系の無輻射崩壊過程についても研究を深める。特に、オージェ遷移過程を取り込んだ計算を実現し、崩壊過程を明らかにする。オージェ遷移過程を取り込むと、共鳴エネルギー準位がさらに安定化することが期待され、共鳴幅に主たる寄与を与える可能性がある。コンピュータメモリの制約があるため、オージェ遷移前後の状態を計算し、これを混合して全ハミルトニアンを再度解き直す計算法を検討している。「ミュオン雲中でのヘリウム核共鳴コア」についてもこれまでの散乱計算法を駆使して研究を進める。
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Causes of Carryover |
国際会議International Conference on Exotic Atoms and Related Topics (EXA) に参加予定であったが、COVID19に関連して延期となった。2021年9月に開催が予定されているため、参加を検討する。万一本会議がオンライン開催等に切り替わった場合には、当該助成金と合わせて成果発表のオープンアクセス化費用に使用する。
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[Presentation] ルンゲクッタ法によるミュオン触媒核融合の時間発展の計算2020
Author(s)
山下琢磨,奥津賢一,木野康志,中島良太,宮下湖南,安田和弘,岡田信二,佐藤元泰,岡壽崇,河村成肇,神田聡太郎,下村浩一郎,Strasser Patrick,竹下聡史,反保元伸,土居内翔伍,永谷幸則,名取寛顕,西村昇一郎,Amba Datt Pant,三宅康博,石田勝彦
Organizer
日本物理学会2020年秋季大会
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[Presentation] Time evolution calculation of muon-catalyzed fusion in deuterium-tritium mixture2020
Author(s)
T. Yamashita,K. Okutsu,Y. Kino,R. Nakashima,K. Miyashita,K. Yasuda,S. Okada,M. Sato,T. Oka,N. Kawamura,S. Kanda,K. Shimomura,P. Strasser,S. Takeshita,M. Tampo,S. Doiuchi,Y. Nakatani,H. Natori,S. Nishimura,A. D. Pant,Y. Miyake,K. Ishida
Organizer
3rd Asia Pacific Symposium on Tritium Science
Int'l Joint Research
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