2020 Fiscal Year Research-status Report
Search for the alpha condensed state in 20Ne with a gas target system and neural network
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20K14490
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
足立 智 大阪大学, 理学研究科, 招へい研究員 (60838126)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アルファ凝縮状態 / ニューラルネットワーク / ガス標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度において、本研究目的達成のために必要となる基礎技術の開発を主軸に研究を行った。この基礎技術には大きく分けて、ニューラルネットワークによる荷電粒子識別方法の開発と高度化ガス標的の開発がある。 荷電粒子識別方法の開発については、シリコン半導体検出器の基礎特性を密封線源を用いて確認したうえで2020年6月と10月に神戸大学タンデム加速器を用いてシリコン半導体検出器のテスト実験を行った。本実験により検出器の波形情報を用いて粒子識別するための測定条件と増幅回路の最適化を行った。さらに2020年11月には東北大学CYRICにて連続エネルギーの種々の粒子に対する波形データを取得した。本データを用いて、ニューラルネットワークを用いた機械学習による荷電粒子識別を実行しその性能を評価した。 高度化ガス標的の開発については、温度変化に堪えうる標的の開発のため特殊な極薄の窒化シリコン薄膜をイギリスとカナダの製造業者と議論を重ね製品の調達に向け手続きを進めている。窒化シリコン薄膜の相談及び手配と並行して、ガス標的周辺の真空度向上のためにドライポンプと真空度計の新規購入して整備と真空隔壁の設計と製作を遂行した。窒化シリコン薄膜と真空隔壁は本高度化ガス標的の実現に必要不可欠な技術要素である。 そして大阪大学核物理研究センターの共同利用実験として本研究課題遂行に必須となる実験期間割当のために実験提案を行った。実験提案を行うにあたり、本研究の測定のために必要な条件、装置、収量の定量的見積り、そして必要実験日数について具体的な計画立案を行った。2021年1月には課題採択委員会が行われ、結果A+と非常によい評価で実験提案と予算案はほぼ申請通り採択された。この共同利用実験としての採択は本研究の遂行において不可欠の非常に重要な進展である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題遂行のためには、ニューラルネットワークによる荷電粒子識別方法の開発、高度化ガス標的の開発、そして実験期間割当のための共同利用実験としての採択が不可欠である。2020年度には使用するシリコン半導体検出器を用いて荷電粒子に対する波形データを取得しニューラルネットワークによる機械学習を行い粒子識別能の評価を行った。その結果必要とされるエネルギー領域においておおよそ必要十分な粒子識別能を有する粒子識別方法を確立することができた。当初の研究計画通り2020年度内に粒子識別に必要とされる技術開発をほぼ完了できたため、順調に進展している。高度化ガス標的の開発については、実現のために不可欠な要素である真空排気系の更新と真空隔壁の設計と製作を完了させた。真空排気系は想定通り正常に動作しており、また真空隔壁は2020年度内に実験施設に配置することができた。これら2点の実験装置の準備状況についても当初の計画通りであり、順調に進展している。本研究課題遂行にあたり最も重要である共同利用実験としての採択に関しては、大阪大学核物理研究センターの課題採択委員会にてA+と非常によい評価で実験提案と予算がほぼ申請通り認められ、かつ本研究の意義と取り巻く状況からできるだけ早い時期に実験を遂行することについても認められた。この採択についても当初の研究計画通りであり非常に順調に進展した。 本研究課題の目標達成に向けては、主に荷電粒子識別方法のさらなる開発と本測定を核物理研究センターにて遂行し実験データを取得解析し論文として発表するということを残している。これらは2021年度内に実施する計画を進めており、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、シリコン半導体検出器の荷電粒子識別方法のさらなる開発と高度化ガス標的の動作テスト、及び本測定を核物理研究センターにて遂行し実験データを取得解析し論文として発表することを予定している。 シリコン半導体検出器については2021年度に新規に1台購入する。また、2021年度前半には茨城県東海村の原子力科学研究所タンデム加速器施設にて本研究課題の本測定に近い実験装置の配置で必要となるエネルギーに近い荷電粒子の測定を予定している。実際の測定状況における粒子識別能力の確認と動作確認を行う予定である。引き続いて、新規に購入したシリコン半導体検出器を含めて神戸大学タンデム加速器にて検出器の時間分解能力の測定を行う予定である。検出器の時間分解能の高さによっては、現在開発中のニューラルネットワークによる荷電粒子識別方法と併用して飛行時間法による荷電粒子識別を行うことができ、実験の測定条件をより最適化することができる。高度化ガス標的については、主となる装置の設計と購入取得を2020年度内に行ったので、2021年度前半に本装置を用いた到達真空度のテストと確認を行う予定である。10^-4 Pa台の真空度をガス標的周辺で維持することを目指し、排気テストと装置の改良を行う。 そして、2021年度内には本研究課題で行う実験の本測定を行う。この本測定に向けシリコン半導体検出器と高度化ガス標的の準備を完了させ約2週間のビームタイムを遂行する。実験データが得られたのちは、これまでに得られた実験データ解析手法を駆使し20Ne原子核のアルファ凝縮状態を高統計で同定しそのスピンとパリティを明らかにする。実験データの解析を終え次第論文として成果をまとめ発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度において実験条件の検討と最適化を進める中で、シリコン半導体検出器の配置を当初予定していた配置から変更することでより定量的に20Ne原子核のアルファ凝縮状態を同定することができることが判明した。具体的にはシリコン半導体検出器を1層から2層に変更する。そのためには追加でシリコン半導体検出器を1台購入する必要がある。当初予定していた高度化ガス標的に必要となるターボ分子ポンプを購入を取りやめ、シリコン半導体検出器を購入する。ターボ分子ポンプについては大阪大学核物理研究センターから借用することができる予定であり研究遂行に問題はない。このシリコン半導体検出器はイギリスのMicronSemiconductor社への特注品となる製品であり、世界的な新型コロナウイルス感染症のまん延のため、製品の製作に遅れが生じており、2020年度内の検出器の製作と納品が不可能であることが判明した。 シリコン半導体検出器をめぐるこの状況から、2020年度予算から繰り越しを行った予算約90万円と2021年度予算の一部を用いて、約150万円の本シリコン半導体検出器のを2021年度7月頃に取得することを目指して調整中である。
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Research Products
(2 results)