2023 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下その場蛍光XAFS-XRD複合測定によるマグマ中のXeの化学状態の解明
Project/Area Number |
20K14584
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
若林 大佑 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (20759964)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マグマ / キセノン / 分子動力学計算 / 機械学習ポテンシャル / シリカガラス / 永久高密度化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、初期地球においてXeが地球深部に固定される化学プロセスを考察することを目的に、高圧下におけるマグマ中の微量なXeの振る舞いを観察するための実験および理論計算手法の開発を行った。特に、多粒子系のシミュレーションを行うための分子動力学計算法の開発では、第一原理計算の結果に基づく機械学習ポテンシャルを用いた計算法の高度化を進めた。ケイ酸塩のような共有結合性の高いメルトでも、高圧条件で安定した数万原子系のシミュレーションが可能な手法を確立した。また、Xeを微量に含むシリカメルトおよびガラスの系のシミュレーションを10 GPaまでの圧力領域で実施した。低圧領域ではSiO4四面体が構成するネットワークのボイド間を自由に移動しているXeが、6 GPa以上の圧力領域では特定のボイドに閉じ込められることが明らかになった。これは、ホストとなるケイ酸塩メルトの中距離ネットワーク構造の変化(高密度化)によってXeが構造中にトラップされる可能性を強く示唆している。 Xeの状態に大きな影響を与えるネットワーク構造の変化について、SiO2ガラスの永久高密度化をモデルとした研究を発展させた。まず、これまでの実験的・理論的研究の結果を統一的に説明する圧力誘起相転移カイネティクスモデルを発表した。X線小角散乱測定の結果は、SiO2ガラスの構造変化の過程で密度不均質が現れることを示唆しており、モデルと調和的であった。一方で、不均質構造の観察を目的に開発した結像型X線顕微鏡では、明瞭な構造は観られず、数100nm以下のスケールの不均質である可能性が高い。最終年度には、開発した分子動力学シミュレーションの手法をSiO2ガラスの構造変化に適用した。不均質構造の出現が良く再現されており、モデルおよび実験と調和的な結果だった。
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