2020 Fiscal Year Research-status Report
積層構造を有する湿潤多孔質弾性体の押込み接触問題の理論解析に関する研究
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20K14612
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
三浦 鴻太郎 成蹊大学, 理工学部, 助教 (30846829)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 接触問題 / 関節軟骨 / 積層構造 / 多孔質材料 / 弾性論 |
Outline of Annual Research Achievements |
積層構造を有する湿潤多孔質弾性体の押込み問題を解析するにあたり,関連する積層構造材料の軸対称円形き裂問題を解析し,査読付学術論文として発表した.多層構造の影響を伝達マトリックス法により整理することができ,積層構造材料の内部に円形き裂が存在する場合,き裂面からより離れた弾性層の剛性を大きくすることでき裂端における応力拡大係数が小さくなることがわかった.伝達マトリックス法による多層構造の定式化および積層構造材料のき裂問題の解析手法は,湿潤多孔質弾性体の解析にも応用できる.湿潤多孔質弾性体の押込み問題では,最終的な解を得るためにラプラス逆変換を行う必要があり,今年度の研究では,数値ラプラス逆変換の本研究課題への適用可能性について調べた.また,本研究で重要となる双積分方程式を無限連立一次方程式へ帰着させる解析手法が多孔質弾性体の解析にも問題なく適用できることを確認した.多孔質弾性半無限体の解析を本解析手法により行い,過去研究の数値結果とよく一致した.実験の実施に当たっては,今年度はインデンテーション試験装置を完成させた.また,材料試験装置としての妥当性を調べるために,ゴム硬さが既知であるシリコーンゴム試験片を用意して,粘弾性特性同定を行った.得られた粘弾性特性の瞬間弾性率をゴム硬さに換算し既知の値と比較した結果,よく一致し,材料試験装置としての妥当性を示すことができた.今後は,湿潤多孔質弾性体に積層構造を持たせた場合の理論解析を行い,その理論解を基礎として,インデンテーション試験法による湿潤多孔質材料の力学的特性の評価手法を確立する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は,2021年度から製作予定であったインデンテーション試験装置が2020年度に完成したことで実験の実施に当たっては,順調に進展している.湿潤多孔質弾性体の押込み問題を解析するにあたり,数値ラプラス逆変換を行う必要があり,その周辺知識の理解および解析への適用に関して整理するために時間を要したが,本研究で重要となる双積分方程式を無限連立一次方程式へ帰着させる解析手法が多孔質弾性体の解析にも問題なく適用できることが確認できた.また,多孔質弾性半無限体の解析を本解析手法により行い,過去研究の数値結果とよく一致することを確認しており,全体的には本研究課題は,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で重要となる双積分方程式を無限連立一次方程式へ帰着させる解析手法がラプラス変換を行う多孔質弾性体の解析にも問題なく適用できることは確認できた.したがって,2021年度には多層構造を持った湿潤多孔質弾性体の押込み問題を解析する.これにより,湿潤多孔質弾性体の応力と変位の詳細な数値結果を示すとともに,力学的特性および積層による不均一性が応力と変位に及ぼす影響を明らかにする.また,実験の実施に当たっては,製作したインデンテーション試験装置を,押込み変位量を一定に保つ,クリープ試験ができるように改良し,また関節軟骨の水分含有量と力学的特性の相関関係について調べていく.湿潤多孔質弾性体の理論解を実験の基礎式とした力学的特性評価も行っていく.動物の関節軟骨試料の入手が難しい場合には,代替的な工業材料を使用して,実験を行う.2022年度には,2021年度に実験的に求められた力学的特性パラメータを用いて,有限要素解析への応用を図る.また,理論解析に関しては,静的な問題だけでなく,動的問題および衝撃問題への展開を行っていく.これによって,日常動作により様々な力学負荷を受ける関節軟骨の応力緩和機構について多角的な面から知見を提供する.
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