2021 Fiscal Year Research-status Report
分光測定および第一原理計算を用いた光触媒・電解液界面構造の解明
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20K14775
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 正寛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40805769)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光触媒 / 雰囲気XPS / 第一原理計算 / その場観察 / 半導体 / 界面 / 表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
安価で高耐久な水素生成用の光触媒材料が開発されればカーボンニュートラル社会の実現に貢献することが気体される。水素製造用光触媒は光触媒(半導体)/電解液界面で反応が起きるのだが、この界面があまりにも複雑なことから、体系的に光触媒材料の高効率化に向けた研究をが困難である。そこで、本研究では、分光測定法および、第一原理モデリングを併用することで、光触媒・電解液界面の構造を調べている。まずは測定結果と第一原理モデリングの結果を比較するため、解析が容易な、理想的な界面構造を扱うこととした。手始めに、水分解において光触媒材料として動作する半導体材料としては比較的結晶品質の良いGaN結晶を用いた解析を行った。 雰囲気X線光電子分光実験を行った。その結果、半導体/電解液界面のXPSスペクトルを測定した。また、同結果を反応場を模擬した第一原理計算結果と比較することで、吸着物(H2Oやその分解生成物)や、半導体電極のスペクトルの帰属を行った。 第一原理計算と併せることでスペクトルの帰属を行うことで、界面の幾何・電子構造を定量的に評価することができた。また、界面では半導体側(バンド曲がりや半導体/担持物界面のバンドオフセット)と電解液側(電気二重層におけるポテンシャルシフト)の効果があらわれるが、基板表面原子のコアレベルから半導体側の情報を、気相の水蒸気のO1sから溶液側の情報をそれぞれ分離して得ることで界面電子準位接続の詳細を明らかにすることができた。 また、半導体/電解液界面の第一原理モデリングによって界面構造の予測も行った結果、半導体表面の欠陥などによって、理想表面に関する理論予測結果と完全には一致しなかったが、概ね予測結果が正しいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本究では、光触媒の動作環境を模擬したシミュレーション方法を提案した。また、第一原理モデリングで界面を反応場とする現象を予測するのは、いまだに容易なことではないが、本研究では、同シミュレーション方法を用いることで、半導体電解液界面の時間発展を予測することに成功している。また、一連の研究の成果は英文論文誌2篇(全て査読有・筆頭)、国際会議における発表3件(全て査読有・筆頭)において発表されるに至っており、おおむね順調に研究が進んでいる。代表的な成果: M. Sato et al., Comparative Study of H2O and O2 Adsorption on the GaN Surface, J. Phys. Chem. C, Vol. 125, 25807-25815, 2021. M. Sato et al., Probing the Effect of Surface Modification of MgO Filler on Charge Transport in Polyethylene/MgO Composites: from an Electronic Structure Viewpoint, IEEE Trans. Dielectr. Electr. Insul., Vol. 28, pp.815-821, 2021. Y. Imazeki, M. Sato et al., Band Bending of n-GaN under Ambient H2O Vapor Studied by X-ray Photoelectron Spectroscopy, J. Phys. Chem. C, Vol. 125, 9011-9019, 2021.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに異種材料界面に関するモデル化や実験を進めることで、界面電子準位接続がどのように決まっているか、より一般性のあるモデルを構築することを目指す。また、これまでの研究によって無機材料表面の準備方法や表面修飾の効果が明確にあらわれ、これを実験および第一原理モデリングの双方から解析することができることがわかっているため、表面処理方法や表面修飾方法による界面構造の差異に関する検討も行う。表面構造吸着物種類やその取りうる構造が多岐にわたることから、表面吸着構造やその時間発展を各種素反応の活性化エネルギーや安定状態のエネルギーをもとに決定する方法を検討する。特に、本年度は多くの界面に関する解析を予定していることからここにデータ科学的な手法を取り入れることで広範な材料界面構造を予測できないか検討する。
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Causes of Carryover |
本研究の第一原理計算を用いたモデル化の部分に関して、すでに2件の論文が掲載されているように解析を順調に進めているが、研究が順調に進んでいるがゆえに、より多くの異種材料界面の解析を行いたいと判断するにいたった。この目的を達成するためにはこれまでよりも飛躍的に計算コストが大きくなるため、追加の計算機を購入する必要がある。この決断は昨年度になされたが、CPUの供給が世界的に滞っているため購入が遅れた。
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