2021 Fiscal Year Research-status Report
水色リモートセンシングによる沿岸域・湖沼に特化した大気補正及び水質推定手法の提案
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20K14836
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
比嘉 紘士 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 准教授 (60770708)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人工衛星 / 大気補正 / 水質推定 / 沿岸域 / しきさい / GCOM-C |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 光学・水質の実測データの取得 今年度は,沿岸域・湖沼に適した大気補正・水質推定モデルの開発に向けて,精度検証を実施するための光学・水質の実測値の取得を継続し,作成した大気補正・水中モデルの検証を行った.光学データは,昨年度東京湾の湾奥部に設置した光学放射計が連続的に大気・水中の光学データを取得した.さらに,船舶観測の実施により,GCOM-C/SGLIの人工衛星との同期観測データ(各物質の光吸収係数,後方散乱係数等の光学実測値及び植物プランクトンの色素,浮遊懸濁物質等の水質濃度の実測値)を取得した.また,湾奥部に設置した光学放射計によって,赤潮や青潮の発生時の連続的な海面射出輝度,エアロゾル光学的厚さの連続測定に成功した. 2. 衛星データによる水質・大気補正モデルの構築 取得した水質・光学データの実測値を使用して,昨年度開発した大気補正・水中モデルの精度検証を実施した.水中モデルの検証では,全球及び日本の高濁度水域で取得されたリモートセンシング反射率(Rrs)と固有光学特性(IOPs)の実測値を使用し,手法が異なる5つのIOPsアルゴリズムの精度検証を行った.その結果,Quasi-Analytical Algorithmが高濁度水域において高い精度でIOPsを推定可能であることが分かった.さらに,取得した植物プランクトンの色素,浮遊懸濁物質, IOPsの実測に基づき,放射伝達モデルによるフォワード計算によって,様々な水質条件におけるリモートセンシング反射率(Rrs)を計算し,合成シミューレションデータセットを作成した.作成した合成シミューレションデータセットをIOPsアルゴリズムに適用し,各種アルゴリズムの性能評価・推定誤差要因の特定を行った.その結果,後方散乱係数のスペクトル勾配のパラメーターの設定が最も沿岸域におけるIOPs推定精度の変化に影響を及ぼすことが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地観測により大気補正・水質推定モデル開発のための光学・水質データの取得が問題なく進んでおり順調にデータの蓄積ができている.既に東京湾のモニタリングポストに自律型の放射計を設置し,海面射出輝度,エアロゾル光学的厚さのデータ取得が連続的に行われており,今年度は赤潮,青潮の光学特性に関するデータも取得できた.これらの光学データは,今後,赤潮や青潮の発生時における衛星データの大気補正・水質推定モデルの誤差要因を解明するだけでなく,その分布の検出と精度検証において重要なデータとなる.また,外洋域及び沿岸域の光学特性が大きく異なる水域で実測した光学データを使用し,IOPs推定アルゴリズムの検証が順調に進められている.これによって,光学特性が異なる様々な水域において,どのような手法がIOPsの推定に有効かどうか明らかにした.さらに今後は水塊ごとに光学特性を分類することによって,対象の水塊に適した手法を適用することにより,IOPs推定の汎用性を向上させることが課題となる.これらのことから,現地観測及び大気補正・水質推定モデルの精度検証に関する進捗として,概ね順調に進展していると言える.残りの期間では,船舶観測における固有光学特性の実測値をさらに収集し,開発した大気補正モデル・水質推定モデルの精度検証を実施し,開発したモデルが季節変化や衛星の幾何条件の変化に対して安定的にRrsやIOPsを高い精度を維持しながら推定可能かどうか検証予定である.また,複数の沿岸域,湖沼においてのIOPs推定の精度は確認中であるが,様々な水域の光学特性を有効に分類する手法の確立や,水中モデルだけでなく大気補正モデルにおいても精度検証を十分に進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
現地観測関連では,引き続き大気補正・水質推定モデル開発と精度検証のための光学・水質データの取集を進める予定である.また,衛星データと船舶観測との同期データがまだ不足しているため,今後も引き続き計画的にデータ収集を進める.また,自律型の放射計は,維持,管理を継続的に行うだけでなく,AERONET-OCプロジェクトを通して,様々な沿岸域・湖沼における光学データを収集することで,各水域の光学的特徴を把握し,大気補正・水中モデルの誤差要因の特定と精度検証を実施予定である.さらに,光学・水質データの実測値を使用した検証を引き続き進めると伴に,大気補正モデル・水質推定モデルの汎用性の向上を目指し,光学特性に基づいた水塊分類を行い,その光学特性の違いによって適した大気補正・水中モデルのパラメーター校正を可能とする新しいアルゴリズムの設計に挑戦する.このためには,大気補正と水中モデルを統合できるよう大気と水中の放射伝達モデルの統合し,連結したルックアップテーブルを作成し,スペクトルマッチング手法を検討する必要がある.また,大気補正・水中モデルの汎用性の検証として,今年度開発した合成シミュレーションデータセットを大気と水中を連結した形で完成させ,大気圏外放射輝度からIOPsまでをインバース可能であるかどうかを検証し,もし推定精度に問題がある場合はその原因を明確化する.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響と現地調査の気象の条件によって,現地観測の調査地点を削減した影響により,分析にかかる費用(消耗品や分析費用)が少し余る結果となった.そのため,次年度は現地観測の地点の増加によって計画分のサンプリングを行い,残額を使用予定である.
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