2021 Fiscal Year Research-status Report
超伝導密度汎関数理論とマテリアルズインフォマティクスによる超伝導物質探索
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20K15012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 光晶 東京大学, 物性研究所, 助教 (30760574)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超伝導密度汎関数理論 / 電子フォノン相互作用 / スピン揺らぎ / スピン軌道相互作用 / ウルトラソフト擬ポテンシャル / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導転移温度の第一原理計算に当たって、計算時間のボトルネックとなる遮蔽交換積分およびスピン揺らぎ媒介相互作用の計算に関して手法開発を行い、プログラムの改良を行った。平面波を用いた第一原理計算においては制度と計算コストのバランスからウルトラソフト擬ポテンシャルや射影増強平面波(PAW)がよく使われるが、その場合には軌道の積に対して補正工が必要となることが、過去の応答関数の計算において指摘されている。我々はその方法を上記の計算に援用して、その精度評価を行った。 また、2020年に発表された二つの超伝導新規汎関数に対して、独自の15の単体・化合物超伝導体ベンチマークセットを用いて検証を行っている。その中で二つの物質、MgB2とYNi2B2Cに関してのみTcの大幅な過小評価が見られた。この兆候を詳しく調べることによりSCDFT凡関数の改良方針が得られると考えている。具体的には、これらの物質はホウ素の軌道がフェルミ面にかかっており、それが超伝導に寄与していると考えられる。このホウ素の軌道は3次元的な共有結合のネットワークを作っている。このような計算結果から当初からターゲットとしている「共有結合性の強い金属」は比較的高いTcが予測されるだけでなく、機構としても他のフォノン型超電導物質とはやや異なっている可能性が示唆される。 ただしMgB2に類する超伝導体はあまり見つかっておらず、どのような物質が「共有結合性の強い金属」かは定量的には分かっていないが、今回のTc計算において他とは違う振る舞いが見られたことはこれらの物質を区別する手がかりを見つけることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遮蔽交換積分、スピン揺らぎ媒介相互作用部分が当初思っていた以上に計算のボトルネックとなることが分かったため、現実的な時間内に計算を遂行するためには高速化が必要だと考え、そのための手法改良・プログラム開発を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
プログラムの計算速度が許容できる程度に上昇したため今後は現状のSCDFTの適用可能範囲に入るかどうか疑わしい物質群(銅酸化物等)に対しても広く計算を行う(これまではセルサイズやバンド本数、擬ポテンシャルのクオリティーから計算を遂行することが難しかった)。また、本筋の新規物質探索に関してはSCDFTの計算において特異なふるまいをするMgB2の周辺の物質にターゲットを絞る。
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Causes of Carryover |
海外開催の研究会が中止となり、また国内学会もオンライン開催となったため旅費の使用が当初予定より少なかった。 また、計算コード開発が進んでいないために大型計算資源をまだ使用開始していないため。
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