2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15124
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井田 由美 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (10792278)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多元系合金粒子 / 磁性 / アークプラズマ蒸着 / 鉄 / ニッケル / アルミニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
次世代の高性能磁性材料として注目されているのがナノコンポジット磁石である。ナノコンポジット磁石は、磁気ヒステリシスをもつ硬磁性相とそれをもたない軟磁性相との間の磁気的相互作用によって、高磁化・高保磁力を実現する。 本研究は、アークプラズマ蒸着法を用いて、系統的に三元合金サブナノ粒子を作製し、新しい強磁性物質群の創出を目指し、磁気特性と構造の相関を明らかにすることを目的とする。高性能な合金磁石の開発には、L10-FePtに代表される規則化構造を形成することが必要である。しかしながら、より煩雑な系となる三元合金で、規則化構造をもつ物性については十分な知見が得られていない。高性能な磁性材料となる組成の要因を、磁性と構造の相関関係により明らかにする。 本年度は、「様々な合金組成をもつ三元合金サブナノ粒子を系統的に合成」と「三元合金サブナノ粒子の各種分光学測定及び磁気特性評価」を行った。三元系の合金を作製するにあたり、まず二元系合金FeNiサブナノ粒子を作製した。アークプラズマ蒸着法では、パルス放電の回数により粒子の大きさを制御できる特徴がある。この手法で作製したFeNi合金粒子は、磁気測定において、粒子の大きさが小さくなるにつれて飽和磁化が大きくなる傾向が得られた。次に、FeNi合金粒子の保磁力を向上させるためにAlを用いた。FeNiの組成比を1:1に固定し、Alの割合を変化させたFeNiAlの合金粒子を系統的に作製した。磁気測定において、Alが過剰量になる組成比の合金粒子では、磁気ヒステリシスが観測された。一方、磁気ヒステリシスは二元系合金のFeNi粒子では見られなかった。よって、三元系固有の物性であると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な金属組成比を変化させた合金粒子を作製するにあたり、バルク磁石において有名なアルニコ磁石を参考に三元系の元素はFeNiAlを選んだ。バルクのFeNiAl磁石におけるAlの含有量は全体の1割程度である。それに対して、サブナノスケールまで小さくすると、Alの含有量の増加は磁石性能を高める要因であることを見出した。 Alの含有量が多いFeNiAl粒子は、XPS、XAFS測定より、FeとNiが還元されていること明らかになった。対照実験として、酸素ガスを過剰に流入して作製したFeNiAlの酸化物粒子とXANESスペクトルを比較したところ、両者には明瞭な差異があった。一般的に粒子は小さくなると、比表面積が大きくなるため酸化されやすくなる。真空中で作製した二元系のFeNi粒子も大気暴露によって酸化されていた。 サブナノスケールにおいて、過剰量のAlがFeとNiの還元に大きく寄与することの知見が得られたことは、他の合金組成の粒子の指針となる。
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Strategy for Future Research Activity |
過剰量のAlがFeNiAl合金粒子が磁気特性を向上させることが明らかになった。 高機能な磁石性能をもつFeNiAlの正確な組成比がまだ特定できていないため、XPS及びXAFS測定から、蒸着した金属量の定量を試みる。 作製した粒子の大きさと合金化の確認をするために、STEM観察とTEM-EDS分析を行う。これまでに測定したSTM測定で観測した粒子の大きさとの整合性を取る。 FeNiAlの三元系合金について論文執筆に着手する。 並行して、FeNi以外の組み合わせ(例えばFeCoなど)で上記の三元系合金の組成と同じ条件で作製し、磁気特性の比較を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、実験に必要な備品や合金粒子を作製するための担体は既存のもので代用できたためである。また、コロナ禍において、出張実験や学会発表等の旅費の支出がほぼなかったためである。 使用計画として、実験に必要な合金粒子の作製のために、新しい金属ターゲットを購入する。それと並行して、学会発表と論文投稿に費用を当てる。
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