2020 Fiscal Year Research-status Report
Direct growth of germanene between h-BN layers
Project/Area Number |
20K15134
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鈴木 誠也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYS研究員 (90590117)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲルマネン / 透過型電子顕微鏡 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2次元材料の最適基板として知られる六方晶窒化ホウ素(h-BN)の層間にゲルマネンを直接合成する手法を研究し、デバイス化によるゲルマネンの電子輸送特性評価を目的としている。初年度は、h-BNよりも試料が取り扱いやすいグラフェンを用いて、ゲルマニウム(Ge)薄膜の挟み込み構造作製手法を確立し、加熱によるGeの結晶化について研究した。 ゲルマニウム(Ge)薄膜の挟み込み構造の作製のため、従来の湿式転写法を改良した。具体的には、グラフェン層数や機械的な支持膜に使用するポリマー種を変更した。Ge薄膜は、電子ビーム蒸着法により成膜を行った。改良した湿式転写法を用い、透過型電子顕微鏡(TEM)でその場観察が可能な加熱ホルダー上にグラフェン/Ge/グラフェンのGe挟み込み構造を作製した。 まず、比較的膜厚の厚い20 nmのGe薄膜をグラフェンで挟み込み、その場加熱TEM観察を行った。その結果、約1000 ℃を超える高温での加熱後に、Geが剥き出しになっていた領域ではGeが蒸発してなくなる一方、Geがグラフェン層に挟み込まれた領域ではGeが残存することが分かった。また、高温下のその場TEM観察から、グラフェン層内でGeがマイグレーションする様子や、Ge微結晶の核発生と結晶成長の様子が観察された。 またSiO2/Si基板上にグラフェン/Ge/グラフェン構造を作製し、ラマン散乱分光による結晶化についても測定を行っている。550~750 ℃の範囲でGe結晶に由来するピークが観察されたが、さらなる高温ではこのピークは消失した。TEM観察の結果も考慮に入れると、不純物として混入した微量の金属(CuやAg)微粒子が触媒として働き、Geを結晶化させたと考えられる。以上から、Geをグラフェン層内で均一に結晶化するには、Geの融点以上の高温加熱による融液成長が必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の転写法の改良と詳細な条件出しのために試行回数が必要ではあったが、無事に予定していたGe挟み込み構造の作製に成功した。既にTEMによるその場観察まで達成しており、1000℃を超える高温加熱によるグラフェン層内でのGe結晶化について知見を得た。また、このグラフェン/Ge/グラフェン試料は、TEM観察用のセルと見なすこともでき、1000℃以上の高温でも機能する高性能なTEMセルの作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、グラフェンやh-BN層内での結晶化を工夫(申請書で提案済み)することで、Geのゲルマネン化を狙う。結晶化の評価には、ラマン散乱分光などによる分光学的な評価法とともに、TEM観察や走査型トンネル顕微鏡(STM)観察による実空間での構造評価を行っていく。 グラフェン層間でのゲルマネン化する条件をもとに、h-BN層間でのゲルマネン化を行い、電子輸送特性評価を行っていく。
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Causes of Carryover |
・次年度使用額が生じた理由 当該年度の配分額で予定していた物品購入が購入できなかったため、予定を変更して研究業務員の人件費として使用した。そのため、当該年度使用額が減少し、次年度使用額が生じた。 ・次年度の使用計画 次年度(2021年4月~2022年3月)も研究補助者の人件費として使用予定であったが、予定を変更して物品購入(走査型トンネル顕微鏡)に充てる。予定を変更した理由は、2021年4月をもって当該研究業務員が退職(自己都合)となり、新たな研究業務員の募集と採用、および、実験技術を習得するまでの期間を考えると、研究計画の遂行に効果的ではないと判断したためである。
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