2020 Fiscal Year Research-status Report
微細藻類の「大きさ」と「堅さ」に基づいた二枚貝の餌料としての適・不適の基準
Project/Area Number |
20K15577
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伯耆 匠二 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (10809354)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アサリ / 二枚貝 / 珪藻 / 食性 / 餌料環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、アサリの浮遊幼生、着底稚貝(~400μm)、初期稚貝(400~1000μm)の食性と好適餌料を調べるため、京都府阿蘇海の潮下帯および三重県伊勢湾の河口干潟において浮遊幼生および着底・初期稚貝の消化管内容物を走査型電子顕微鏡で観察した。消化管内の珪藻類を同定し、それらの被度に基づいて珪藻組成を定量的に算出した。 浮遊幼生、着底・初期稚貝いずれにおいても、消化管内からは多様な珪藻類が観察された。浮遊幼生の消化管内においては、Minidiscus spp.、Chaetoceros spp.、Pseudo-nitzschia spp.、Thalassiosira spp.、Cyclotella spp.などの浮遊珪藻が優占して認められた。浮遊幼生期の消化管において、Chaetoceros spp.、Pseudo-nitzschia spp.のように比較的薄い細胞殻を有する珪藻は、破壊されて断片と化していたのに対し、厚い細胞殻を有するThalassiosira spp.、Cyclotella spp.などは、大きく損傷することなく原形を保った状態で観察された。浮遊幼生の消化管内における珪藻全体に占める破壊されていた珪藻の割合は、およそ30%~80%程度であった。一方、着底・初期稚貝の消化管内においては、Amphora spp.、Licmophora spp.、Anorthoneis spp.を主体とする底生・付着珪藻が大部分を占めており、浮遊珪藻は数個体の消化管からわずかに認められたのみであった。また、底生珪藻のうち、Licmophora spp.を除く大部分の珪藻については、細胞殻がほとんど破壊されていない状態で認められた。厚い細胞殻を有する底生珪藻が優占する海底の環境生息環境においては、着底初期稚貝の消化に適した餌料は限定的である可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のうち、最も困難と想定していたアサリの初期生活史における食性の解明が、当初の予定通り順調に実施された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で対象とする二枚貝2種のうち、アサリについては初期生活史の食性を明らかにすることができた。残りの研究期間においては、アサリおよびアコヤガイの稚貝期以降の食性を消化管内容物の電子顕微鏡観察に基づいて解明する。また、消化管内容物のメタゲノム解析についても実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)コロナウィルス感染拡大に伴い、宿泊を伴う調査出張を大幅に減らしたことに加え、参加を予定していた学会発表が中止、あるいはオンライン開催となったことで出張費が低く抑えられたため。 (使用計画)消化管内容物の遺伝子解析を当初の予定よりも多くの個体について実施することとして、その解析費の増額分に充てる予定である。
|