2021 Fiscal Year Research-status Report
微細藻類の「大きさ」と「堅さ」に基づいた二枚貝の餌料としての適・不適の基準
Project/Area Number |
20K15577
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伯耆 匠二 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (10809354)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 二枚貝 / アサリ / アコヤガイ / 食性 / メタバーコーディング / 葉緑体ゲノム / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
アサリおよびアコヤガイの天然海域における食性とそれらの成長に伴う変化を調べるため,消化管内容物のSEM観察およびDNAメタバーコーディング(DNA-MB)解析に基づく食性解析を実施した。DNA-MB解析については,殻長100μm程度の浮遊幼生から殻長80㎜程度の成貝に至る各成長段階について,DNA抽出方法(解剖,DNA抽出キットの選択),PCRにおけるDNA希釈倍率などの手法を確立し,安定して対象領域を増幅可能な手法を確立した。なお,本研究においては,微細藻類のDNAのみを選択的に増幅するために,複数の葉緑体ゲノムのユニバーサルプライマーを使用した。 光合成植物を網羅的に増幅するプライマーを用いたDNA-MB解析の結果,アコヤガイ初期稚貝の消化管内からは珪藻だけでなく,藍藻やハプト藻,クリプト藻,ピングイオ藻等のSEMでは観察できなかった多様な微細藻類が検出された。アコヤガイの消化管内容物と環境水中の微細藻類組成を比較したところ,アコヤガイ初期稚貝は,藍藻および珪藻を選択的に摂食していることが示唆された。 一方,アサリ初期稚貝消化管内容物について,珪藻特異的なユニバーサルプライマーを用いたDNA-MB解析を行った結果,アサリの消化管内容物からはNavicula属,Haslea属,Seminavis属等5属の珪藻が検出された。これらの珪藻は消化管のSEM観察によって確認された属と一致していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたDNA-MB解析の手法確立も完了し,想定よりも良質かつ妥当な解析結果も得られている。また,DNA-MB解析とSEM観察の結果の対応についても検証が完了したため,今後,解析試料数を増やすことで,予定していた研究計画が達成される見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度においては,すでに採集済みの二枚貝および環境水・砂泥試料からのDNA-MB解析を実施する。また,新たに三河湾(愛知県)および万石浦(宮城県)に調査地点を設けて試料採集・分析を行い,二枚貝の食性変化や餌料環境評価法の一般性を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
DNA-MB解析の手法確立のために予定していた解析試料数が想定よりも少なくて済んだこと,また,新型コロナウィルス感染対策のため,宿泊を伴う出張を日帰り出張に変更したことで旅費が大幅に削減された。 余剰の予算については次年度にDNAメタバーコーディング解析費用に充てる予定である。
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