2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K15592
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
山本 圭吾 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 主幹研究員 (80503937)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Alexandrium catenella / 個体群形成 / シスト / 発芽 / 流動 / 海水交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦における麻痺性貝毒による二枚貝の毒化は近年空間的にも期間的にも規模を拡大している。大阪湾における主たる麻痺性貝毒原因プランクトンである Alexandrium caenella(旧A. tamarense) は、同湾内、特に漁港で世界的にも他に類を見ない高密度かつ大規模な赤潮を形成する。内湾や漁港は外洋に比べ流動が小さい静穏な海域であり、強度に閉鎖された海域環境がプランクトンの培養庫となっているのではないかと推測される。本研究では、これまでほとんど評価されてこなかった漁港の培養作用が内湾における有毒プランクトンの大規模ブルームに及ぼす影響を評価するため、①漁港内におけるシストの発芽動態、個体群形成機構を解明する。さらに②流動解析により本湾への供給機構を解明する。これらにより大阪湾で世界的にみても大規模なブルームが形成される要因を探るとともに、将来的な抑止施策構築の基盤に資する。 2020年度に引き続き4月より大阪湾北部沿岸に位置する堺市出島漁港においてA. catenella遊泳細胞の出現状況および漁港内の化学環境、シストの蓄積状況を調査した。また、ペットチャンバーによる底泥の現場培養により、シストの発芽状況を調査した。さらに2022年2月~3月にはADCPを用いて約40日間の流向流速の連続観測を行い、漁港内外の海水の流動を調査した。 漁港内のシスト密度は増減はあるが年間を通じて1立方cmあたり数100cystsで観察されたが、現場でのシストの発芽は低レベルであった。2021年度の栄養細胞は、発生の遅かった2020年度よりもさらに遅く増殖が確認され、規模も2020年度と同程度で近年では小さい状況であった。ADCPデータの解析結果から、港内外の海水交換は潮汐とともに風の影響が大きいことが伺われた。風向・風速を考慮した40日間連続観測の流況については現在データ解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナによる現場調査の制限はあったが、概ね目的の回数をこなすことができた。一方、想定していたよりもプランクトンの増殖は低調であったが、発芽から増殖までの一連の動きを捉えることができている。また、1年目の結果から、流動の解析を24時間の単位から、約40日(2潮汐分)の長期にわたる連続観測に切り換えたことで、より詳細なデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Alexandrium catenella栄養細胞の動態については2年間低調に推移したため、年度終わりではあるが、最終年度も引き続き年明けから調査を行う。また、夏季の有害プランクトンにも対象範囲を拡大し、夏季においても頻度を上げたサンプリングを行う予定である。
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