2020 Fiscal Year Research-status Report
老化・肥満で増加する血中小分子ヒアルロン酸による肝臓の炎症・線維化誘導機構の解明
Project/Area Number |
20K15695
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
高杉 征樹 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (30711965)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒアルロン酸 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒアルロン酸は大部分が高分子ポリマーとして皮膚・筋肉・支持組織に含まれており、これらの組織中で部分的に分解された後、血中を介して肝臓に運ばれる。部分的に分解された血中の低分子ヒアルロン酸は肝臓の類洞内皮細胞が発現するStabilin-2(Stab2)を介し細胞内に取り込まれ、血中から除去される。血中ヒアルロン酸濃度の上昇は肝臓の線維化による類洞内皮細胞の代謝機能の低下を示すとされ、この事は肝疾患の指標としても利用されている。しかしながら、肝臓に流入する低分子ヒアルロン酸が類洞内皮細胞を介し肝臓に及ぼす影響についてはこれまで調べられてこなかった。一方で、老化や肥満は種々の肝疾患のリスクを増加させると同時に、血中ヒアルロン酸濃度も大きく上昇させる。本研究では老化や肥満に伴う血中ヒアルロン酸の増加が類洞内皮細胞のStab2を介し肝臓の線維化や炎症に及ぼす影響の詳細を検討し、そのメカニズムの解明を目指す。本研究を通じて、血中低分子ヒアルロン酸の新規の為害性に着目した肝疾患の予防法の開発が可能になる事が期待される。本年度はヒアルロン酸入り浸透圧ポンプの体内への埋め込みにより血中ヒアルロン酸を選択的かつ持続的に増加させたマウスを作出し、肝臓、加えて腎臓と脾臓といった、ヒアルロン酸の代謝に重要であったり、ヒアルロン酸の受容体を高発現している組織に対して、血中ヒアルロン酸が与える影響をRNA-Seq解析によりトランスクリプトームレベルで明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元々の研究計画で予定していたヒアルロン酸投与後の肝臓におけるトランスクリプトーム変化の解析を実施し、さらにヒアルロン代謝に重要な腎臓や脾臓についてもトランスクリプトーム解析を行った。したがって、予定していたよりも充実した形で、血中小分子ヒアルロン酸の影響の全容を捉える事ができたと考えられ、研究は順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはトランスクリプトーム解析により捉えられた血中小分子ヒアルロン酸依存性の変化を異なる実験手法でも裏付ける確認作業を進めていくと共に、変化の特徴をオントロジー解析などにより明らかにしていく。その後は予定通り血中小分子ヒアルロン酸が作用を発揮するメカニズムの解析を進めていく。
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