2022 Fiscal Year Annual Research Report
老化・肥満で増加する血中小分子ヒアルロン酸による肝臓の炎症・線維化誘導機構の解明
Project/Area Number |
20K15695
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
高杉 征樹 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 助教 (30711965)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヒアルロン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒアルロン酸は細胞外マトリックスの主要な要素の一つであり、高分子ポリマーとして主に皮膚・筋肉・支持組織中に存在している。組織中の高分子ヒアルロン酸は一部局所で完全に分解され、また一部は部分的な分解を受けて低分子ヒアルロン酸として血中に遊離する。低分子ヒアルロン酸の細胞に対する作用は高分子ヒアルロン酸とは大きく異なっており、炎症に促進的である事が多く報告されている。このように潜在的に有害な血中の低分子ヒアルロン酸は通常、類洞内皮細胞の細胞膜上に発現するStab2を介しエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、速やかに血中から除去される。しかしながら、老化や肥満に伴い血中ヒアルロン酸濃度は劇的に増加する。そこで、増加した血中ヒアルロン酸濃度が類洞内皮細胞に炎症反応を引き起こさせ、それにより肝臓の線維化が促進されるという仮説を立て、まずは血中小分子ヒアルロン酸の生体内における役割を解析するため、小分子ヒアルロン酸を徐放する浸透圧ポンプをマウスの生体内に埋め込み、一週間に渡り生体内の血中ヒアルロン酸レヘルを倍化させた。その影響を特に受ける事が予想される肝臓、腎臓、そして脾臓についてトランスクリプトーム解析を実施したところ、血中だけでなく肝臓でもヒアルロン酸レベルが倍化していたにも関わらず、驚いたことに全くと言って良いほどこれらの臓器の遺伝子発現パターンには影響が認められない事がわかった。したがって、加齢や肥満に伴い血中に増加する小分子ヒアルロン酸には為害性がないかあっても極めて小さい事が強く示唆された。本研究成果は、主にin vitroの解析から炎症促進作用が報告されている小分子ヒアルロン酸が、in vivoではそのような効果をあまり発揮しない事、ひいては加齢や肥満で増加する血中小分子ヒアルロン酸が治療のターゲットとしてはあまり期待できない事を示唆している
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