2021 Fiscal Year Research-status Report
基部陸上植物ゼニゴケの生殖誘導を制御する光シグナルと概日時計の統合機構の解明
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20K15818
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 佳祐 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (20805931)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光シグナル / 概日時計 / 日長認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
日長を認識した季節応答は、生物が適切なタイミングで繁殖する仕組みとして重要である。被子植物の日長認識機構は、光シグナルと概日時計の相互作用によって成立する。日長要求性の違いによって相互作用の仕組みが異なることから、個々の植物種がそれぞれに適した日長認識機構を進化させたことが予想されるが、これまでの日長認識機構の解析は被子植物に限定されており、進化的な考察が不十分であった。本研究では、基部陸上植物である苔類ゼニゴケの日長認識機構を、生理学・生化学・分子遺伝学的な手法によって多角的に解析し、日長認識の基本メカニズムを分子レベルで解明することで、陸上植物の日長認識機構の普遍性と多様性を理解する。 本年度は、非24時間の日周条件における表現型をさらに詳細に解析し、ゼニゴケの日長認識は概ね明期と暗期の長さのバランスで決まることを明らかにした。このことから、ゼニゴケは明期に何らかのシグナルが蓄積し、蓄積したシグナルが暗期で分解するような砂時計式の日長認識機構をもつことが示唆された。また、4時間以内のような著しい短時間、または48時間以上のような著しい長時間の日周条件下では明暗バランスによる日長認識の応答性が崩れることを見出した。明期でのシグナルの蓄積には転写因子PIFを介した遠赤色光シグナルの関与が予想されるため、遠赤色光の照射時間に応じて発現が変動する遺伝子の同定を目的としたRNA-seqのためにゲノム編集によってpif変異体を作出した。また、明暗バランスによる日長認識に関与する候補因子として、日長依存的な成長相転換の抑制因子であるCDFに着目し、CDFタンパク質の蓄積量を解析するための条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生理学的解析から、ゼニゴケが当初の仮説に近い形の日長認識機構をもつことが明らかになりつつある。また、ゼニゴケの日長認識を実現する分子機構を解明するための形質転換体の準備や、解析の条件検討も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqや生化学的な解析によって、明期で蓄積して暗期で減衰すると予想されるシグナルの実体を探るとともに、そのシグナルがどのような分子機構で制御されているのかを明らかにする。また、得られた結果をまとめてゼニゴケの日長認識モデルを構築し、陸上植物の日長認識機構の進化について考察する。
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Causes of Carryover |
表現型解析から興味深い結果が得られたため、RNA-seqの条件検討を慎重に行い、次年度に解析を行った方が有意義であると考えられたため。
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