2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞特異的なプリン作動性化学伝達の出力系の生理的意義の解明と応用
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20K15993
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 百合 九州大学, 薬学研究院, 助教 (10732042)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ATP / プリン作動性化学伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性疼痛の発症メカニズムは不明な点が多く、いまだ副作用の少ない有効な治療薬は開発されていない。応募者は慢性疼痛の発症に重要であるATPを伝達物質とするプリン作動性化学伝達に着目した。ATPの小胞内蓄積を司る小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)を阻害すると、既存薬で報告されている重篤な副作用は見られず、幅広い慢性疼痛に対して鎮痛効果を発揮し、抗炎症効果も示すことを明らかにした。本研究では、プリン作動性化学伝達の出力系に着目し、この制御により中枢もしくは末梢組織におけるプリン作動性化学伝達の生理的意義を明確にすることで、より効果的な分子標的型の新しい治療薬の開発を目指す。 応募者が以前発見したVNUT特異的阻害剤であるクロドロン酸は骨粗鬆症治療薬として知られている既存医薬品であるため、新薬開発を目的として新たなVNUT阻害作用を有する化合物を探索した結果、化合物Xを見出した。化合物XはIC50がnMオーダーであり、新たに確立した慢性疼痛モデルマウスにおいても鎮痛効果を示したが、VNUTノックアウトマウスにおいては鎮痛効果が見られなかった。また、現在流行している新型コロナウイルス感染症において、重症化時に内皮細胞の炎症やサイトカインストームが引き起こされることが報告されている。これらの原因の一つにATPの関与も言われているため、様々な細胞におけるプリン作動性化学伝達の関与を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VNUTの新たな特異的阻害剤を見出し、この化合物のタンパク質レベルでのVNUT阻害様式を明らかにした。また、この化合物が慢性疼痛モデルマウスにおいて鎮痛効果を示すことを明らかにした。以上のことから、本研究課題の目的である分子標的型のより効果的な新しい治療薬の開発へ向けておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
部位特異的VNUT KOマウスや疾患モデルマウスを用いて、組織におけるプリン作動性化学伝達の生理的意義を明らかにする。また、新興感染症の重症化(炎症)における細胞特異的なプリン作動性化学伝達の関与を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は新興感染症の影響により、期日までに納品されない消耗品があったため、 次年度内での購入に使用する予定である。
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