2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞特異的なプリン作動性化学伝達の出力系の生理的意義の解明と応用
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20K15993
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
加藤 百合 九州大学, 薬学研究院, 助教 (10732042)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ATP / 慢性疼痛 / EPA / プリン作動性化学伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性疼痛は発症メカニズムが不明な点が多く、いまだ副作用の少ない有効な鎮痛薬は開発されていない。鎮痛効果が言われている身近な栄養素の1つにオメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)がある。EPAは過去の研究から神経保護作用、心血管保護作用、抗炎症効果により慢性疼痛や慢性炎症に効果があることが知られている。これらの効果はEPAのCOX阻害作用によるものと報告されているが、COX2阻害剤であるNSAIDsが神経障害性疼痛に奏功しにくいことなど、その作用標的には矛盾点が見られていた。 応募者は慢性疼痛の発症に重要であるATPを伝達物質とするプリン作動性化学伝達に着目した。精製タンパク質を用いて、VNUTのATP輸送活性をEPAが阻害することを見いだした。EPAは神経細胞から放出される神経伝達物質のうち、ATP放出のみを抑制した。また、EPAの投与により複数の神経障害性疼痛モデル、炎症性疼痛モデルマウスで鎮痛効果が見られ、VNUTノックアウトマウスにおいては薬効が見られなかった。さらに、VNUTノックアウトマウスに抗がん剤を投与して神経障害性疼痛モデルを作製すると、疼痛の発症が野生型の疼痛モデルマウスより遅延すること、疼痛の重症度が緩和していることを新たに見いだした。以上の結果からEPAはVNUTを標的としてプリン作動性化学伝達を遮断することで鎮痛効果を示すことを明らかにした。
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