2020 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞の慢性期神経脱落における自己免疫性活性化T細胞および頚部リンパ節の役割
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20K16006
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
泉尾 直孝 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (50722261)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 頚部リンパ節 / 神経変性 / 炎症反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞は、血管の狭窄・閉塞により、その支配領域の神経細胞が壊死する疾患である。このような急性期の変化に加えて、慢性期には梗塞領域とは離れた領域において神経脱落(二次性神経脱落)が認められる。この二次性神経脱落は、認知症や片麻痺などの脳梗塞の後遺症の原因となると考えられている。本研究では、慢性期の二次性神経脱落における、急性期の炎症応答の関与について検証している。 脳梗塞の発症後には、脾臓を中心とした全身の免疫活性化が認められる。一方、我々は、頚部リンパ節がリンパ管を介して脳と結合していることに着目し、頚部リンパ節の脳梗塞における役割を検討した。まず、脳室内に色素であるエバンスブルーを注入すると、頚部リンパ節が染色されることが1時間以内に染色された。このことから、脳梗塞において頚部リンパ節は非常に速い応答を示すことが示唆される。次に、脳梗塞モデルマウスを、梗塞の後発部である中大脳動脈をフィラメントで閉塞す手術(MCAO)を施すことで作製した。このようなMCAOマウスでは、梗塞巣の形成、運動機能の低下が認められた。また、頚部リンパ節の重量は変化しなかったものの、赤く炎症性に膨大化しているような外観を示した。一方、術前にマウスの8個の頚部リンパ節をすべて除去したマウスにMCAOを施した場合、急性期における梗塞巣体積の減少傾向と慢性期における運動機能低下の抑制傾向が示された。 これらのことは、頚部リンパ節が脳梗塞の病態形成に重要な役割を果たしていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、最も重要なコンセプトである、「頚部リンパ節の脳梗塞病態における重要性」を確認することができた。MCAOの手技の安定化や頚部リンパ節の除去術など、技術的な課題をすべてクリアし、現状は順調に研究成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
頚部リンパ節を除去したマウスにMCAOを施し、その病態について評価する検討については、実験動物数を増やして確実なデータを取得する。頚部リンパ節では、脳内炎症反応の引き金が引かれていると考えられるので、頚部リンパ節除去術の有無による、脳梗塞後の炎症応答に差があるか否かについて、免疫染色とフローサイトメトリーの実験手法を組み合わせて検証を行う。また、炎症応答のパターンを遺伝子解析によって明らかにし、その炎症応答を薬理学的に調節した時の脳梗塞病態の変化についても明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス対策により、旅費を使用することがなかったこと、研究室の活動度を下げざるを得なかったことで、次年度使用額が発生した。これらについては、研究試薬及び実験動物の購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)