2020 Fiscal Year Research-status Report
持続的腎代替療法を加味した集中治療域における抗感染症薬の母集団薬物動態解析
Project/Area Number |
20K16048
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
田中 遼大 大分大学, 医学部, 准教授 (30781736)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 集中治療領域 / 持続的腎代替療法 / ドリペネム / 抗MRSA薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、集中治療部(ICU)入室中の重症感染患者を対象に、初期経験的治療で用いられる抗MRSA薬やカルバペネム系薬の持続的腎代替療法(CRRT)によるクリアランスの有無を考慮した母集団薬物動態(PPK)モデルを構築することを目的としている。令和2年度の研究実績は以下の通りである。 1.ICU入室患者を対象としたCRRTによるクリアランスを加味したドリペネムのPPK解析 ICU入室中にドリペネムが投与され、文書による同意を得た21例(CRRT施行9例)を対象とした。ドリペネム初回投与前、投与後1、2、4、6、8時間後の血漿中濃度を測定し、NONMEMを用いたPPK解析を実施した。薬物動態モデルは、CRRTによるクリアランスを考慮した点滴静注時の2-コンパートメントモデル(ADVAN6)を用いた。各PKパラメータの個体間変動には指数誤差モデルを、個体内変動には付加誤差モデルを選択し、Final modelの構築には変数増減法を用いた。消失経路にCRRTによるクリアランスを組み込んだところ目的関数の有意な減少が認められた。これをBase modelとし共変量探索した結果、クリアランスにクレアチニンクリアランス(Ccr)を組み込むことで目的関数の有意な減少が得られた。Final modelを構築後、Goodness of fit、Visual predictive checkおよびBootstrap法によりバリデーションを実施した結果、モデルの妥当性および推定値の信頼性が証明された。 2.3種の新規抗MRSA薬の高感度同時測定系の開発 超高速高分離クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置を用いたリネゾリド、ダプトマイシンおよびテジゾリドのハイスループットかつ広範囲な同時定量法の開発に成功し、ICU患者を対象に臨床応用可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ドリペネム使用患者のPPK解析が完了し、Scientific Reportに論文が採択となった。また、抗MRSA薬については、3種の新規抗MRSA薬の高感度同時測定系の開発に成功し、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysisに論文が採択となった。ICU患者を対象に臨床応用可能であることも確認できており、今後本測定系を用いてテジゾリドおよびリネゾリドのPPK解析を実施する予定である。なお、テジゾリドについては共同研究先の麻酔科に既に了承を得ており、倫理委員会による承認も得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度については、テジゾリド使用患者のリクルートおよび検体回収を行う予定である。テジゾリドについては、現状皮膚軟部組織感染症のみの適応であるため、対象症例数は少ない可能性があるが、共同研究先と連携し極力全例リクルートを試みる。なお、血漿中テジゾリドの測定は、令和2年度に確立した超高速高分離クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置を用いた測定系を用いる予定である。また、リネゾリドについても、倫理委員会の承認を得る予定である。
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Causes of Carryover |
ドリペネムの測定について、当初は96-well μElution Plateを固相抽出に使用し、超高速高分離クロマトグラフ-タンデム型質量分析装置を用いた系を利用する予定であったが、回収率が良好でないため断念し、代わりに高速液体クロマトグラフィーによる測定系を用いた。それに伴い購入した消耗物品が当初の予定より安価になり、次年度使用額が生じた。次年度の使用計画としては、テジゾリドの測定用のUPLCカラム、標品、内標準物質、96-well μElution Plate等を購入する。また、令和3年度の成果について、論文投稿費およびOpen journalについては論文掲載料に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)