2021 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌が代謝する新規機能性脂肪酸による肥満誘導性肝がん抑制機構の解明
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20K16121
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
神谷 知憲 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (80823682)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / 肝癌 / 細胞老化 / リノール酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
高リノール酸(LA)食給餌により肥満誘導性肝がんモデルにて腫瘍形成数が抑制された結果を紐解くため、本年は以下の項目を実施した。 肥満誘導性肝癌において、肝星細胞の細胞老化に伴う細胞老化随伴分泌現象(SASP)による慢性炎症の誘導が肝癌形成に大きく寄与することが報告されている。これまで長鎖脂肪酸やその腸内細菌代謝物のSASPへの影響については研究がなされていない。そこで、肝星細胞の細胞老化、及びSASPに与える影響を検証した結果、高LA食給餌マウスの腫瘍部位においても肝星細胞の細胞老化、及びSASP因子を確認することができた。 高LA食給餌マウスの腸内で顕著に増殖した乳酸桿菌がリノール酸を水酸化脂肪酸に変換するため、対象となる水酸化脂肪酸を含む餌を開発することで、腫瘍形成への関与を検証できると考えた。共同研究者から高純度の水酸化脂肪酸を精製いただき、低LA含有高脂肪食に混餌することで、水酸化LA代謝物の効果を検証することを目的にし、開発に成功した。 また別の角度から、高LA食給餌マウスの腫瘍形成抑制が腸内細菌によるものなのかを証明するため、抗生物質により常在細菌叢を除去する必要がある。しかしながら、肝星細胞の細胞老化を誘導する物質であるデオキシコール酸も腸内細菌特異的な代謝産物であるため、高脂肪食にデオキシコール酸を混餌することで、抗生物質投与下においても肝がん発症を期待できる。上記水酸化LA代謝物と同様の行程にて、各種デオキシコール酸含有高脂肪食の作成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
項目①は、昨年度の推進方策をもとに実施した内容であり、項目②は今年度新たに行った項目である。昨年度の方策の1つが実施できておらず、次年度以降も継続したい課題である。 ① LA代謝物が作用する細胞を特定する … 肥満誘導性肝癌においては、肝星細胞の細胞老化に伴うSASP因子の放出により、慢性的な炎症状態が発生し、その結果肝癌形成至る。そこで、高LA/低LA含有高脂肪食を給餌したマウスにおいても、上記現象が発生しているかを検証した。その結果、高LA/低LA含有高脂肪食マウスの腫瘍部位においても肝星細胞の細胞老化、及びSASP因子を確認されたことから、これまでの発症機序と同様であることが予想された。 ② 高LA食による抗腫瘍効果が腸内細菌叢の関与によるものかを、in vivoにて検証する … 高LA含有高脂肪食にて抑制される肥満誘導性肝がんが、これまでの知見と同様に腸内細菌依存的に発症するのか、また抑制機構も腸内細菌叢を介しているのかを検証する必要がある。これまで、腸内細菌叢関与を示すために抗生物質の投与が行われ、肝がん発症が抑制されている。しかしながら、高LAの腸内細菌叢への影響、及び肝がん発症への影響のみを確認するためには、肝がんを誘導しつつ抗生物質による腸内細菌除去が必要となる。そのため、肝がん発症に必須である二次胆汁酸であるデオキシコール酸を混餌させた高脂肪食が必要となり、今年度は作成を試み開発に成功した。また、高LAの腸内細菌代謝物である水酸化脂肪酸の抗腫瘍効果をin vivoにて検証するため、共同研究者から高純度の水酸化脂肪酸を供与いただき、低LA含有高脂肪食に混餌を試み、こちらも本年度までに開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に実施する内容を箇条書きにて記載する ● 高LA食による抗腫瘍効果が腸内細菌叢の関与によるものかを、in vivoにて検証する … 水酸化脂肪酸含有の高脂肪食にて、抗腫瘍効果が発揮されるかを検証する。また抗生物質投与による腸内細菌除去を行い、デオキシコール酸含有の高LA含有高脂肪食給餌により腸内細菌とLAによる抗腫瘍効果の検証を行う。 ● LA代謝物が作用する細胞を特定する(肝星細胞) ... 肥満誘導性肝癌において、肝星細胞の細胞老化に伴う細胞老化随伴分泌現象(SASP)による慢性炎症の誘導が肝癌形成に大きく寄与することが報告されている。これまで長鎖脂肪酸やその腸内細菌代謝物のSASPへの影響については研究がなされていない。本年度はIn vivoによる細胞老化を確認できたことから、次年度はin vitroによる評価を実施する。
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Research Products
(4 results)