2022 Fiscal Year Annual Research Report
Neuroendocrine mechanism of precocious puberty caused by fetal stress in utero
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20K16123
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
美辺 詩織 岩手医科大学, いわて東北メディカル・メガバンク機構, 特命助教 (40781571)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 思春期早発症 / 神経内分泌学 / 性成熟 / 胎児プログラミング / 視床下部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、思春期早発症の発症機序について、「発達期の生育環境が、成長後の健康や疾患発症に影響する」とする医学学説(DOHaD仮説)の実験的証明をするため、胎児期ストレスによる思春期早発症の神経内分泌メカニズムを解明することである。具体的には、妊娠9日目から出産までの間、母ラットの食物摂取量を対照群と比較し50%に制限し、制限給餌の母親から生まれてきたメスの子ラットを胎児期栄養ストレスモデル(UN群)とし生殖機能の解析を行なった。UN群では、自由摂食の母ラットから生まれてきた対照群と比較して出生体重が有意に低下し、その傾向は出生後3週間まで継続した。さらに、UN群では低体重での膣開口や初回発情の早期化などの性的早熟の兆候を示した。次に、この胎児期栄養ストレスによる性的早熟傾向の神経内分泌メカニズムを明らかにするため、生殖機能の中枢制御因子である視床下部KNDy遺伝子(Kiss1、Tac3およびPdyn)の発現解析を行った。その結果、対照群ではUN群と比較して性成熟前の視床下部Tac3遺伝子発現は有意に上昇し、視床下部Pdyn遺伝子発現は低下傾向を示した。Tac3及びPdynはゴナドトロピン分泌に対してそれぞれ促進、抑制的に機能することを鑑みると、胎児期栄養ストレスは視床下部のTac3とPdyn遺伝子発現を変化させることでゴナドトロピン早期分泌による中枢性思春期早発を引き起こす可能性が示唆された。興味深いことに、対照群と比較しUN群では中年にあたる29週齢以降において、KNDy遺伝子発現細胞数の有意な減少が認められた。以上のことから、胎児期の栄養不足は雌ラットの視床下部の胎児プログラミングを引き起こし、ライフステージにより異なったKNDy遺伝子発現の変化を引き起こすことが明らかとなった。本研究成果は、国際誌Endocrine Connectionsで誌上公表した。
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