2021 Fiscal Year Research-status Report
Pile-up型増殖に着目した新規肝細胞培養法確立および肝がん治療化合物の探索
Project/Area Number |
20K16226
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
宇留島 隼人 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90755745)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肝細胞 / アルブミン / 肝細胞がん |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク合成やコレステロール代謝、解毒などの肝細胞特異的生理機能を長期間維持でき、かつ、手技的に簡便で低コストな肝細胞培養法は未だ確立されていない。肝細胞は一般的な上皮細胞と異なり基底膜に裏打ちされていない組織学的特徴を有する。したがって、基底膜に接した単層平面的な形態ではなく、基底膜に依らない肝細胞同士の接着による重層状構造を形成すると考えられ、この立体構造による細胞極性の獲得こそが肝細胞特異的機能の発揮に必要であると考えられる。 2020年度に申請者はヒト肝がん細胞株HepG2細胞に重層増殖タイプ(Pile-up型)と平面単層増殖タイプ(Flat型)が混在することに気付き、それぞれをクローニングしたところFlat型に比べてPile up型の方がアルブミン合成能が顕著に高かった。我々はその中の一つの遺伝子Aに着目した。Pile up型HepG2細胞の遺伝子Aをノックダウンしたところアルブミンの合成能が50%以上減弱した。 今年度はFlat型からPile-up型へと形態を変化させる化合物の探索を試みた。大阪大学薬学部が有するFDA承認化合物1134種類の化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを行った(AMED支援事業BINDSと共同研究)。ヒットした化合物は形態変化のみならず、HepG2細胞におけるアルブミン合成能を増強した。またマウスから単離した初代培養肝細胞に対しても同じ効果が見られた。そのメカニズムの一つとしてアルブミン発現に関わる転写因子の一つが増強が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、RNAマイクロアレイで抽出されたPile up型とFlat型で発現に差がある遺伝子群の中から肝細胞特異的機能の発揮に重要である因子の探索を目標としていた。実際に我々は2020年度において遺伝子Aがアルブミン発現に重要であること、また遺伝子Aの発現低下が肝がんの悪性度を増悪させることを発見した。 2021年度では1000種以上の化合物ライブラリーから形態変化を起こす化合物を「肉眼的観察」によってピックアップし、実際にその化合物がアルブミン合成能を増強することを発見したことからおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在低アルブミン血症患者に対する治療は主にアルブミン製剤が使用されているが、使用期間や回数などに制限があり十分な効果が得られないことが多い。本研究はこれらの臨床的問題点を解決する可能性があるため、基礎的データの集積が求められる。 2021年度に我々が見出した化合物はFDAの承認を受け、現在既に臨床で使用されている。従って、迅速にヒト臨床へと展開することが可能である。 2022年度はマウス担癌モデルあるいは低アルブミン血症モデルマウスを使って効果検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で参加予定していた学会が中止となり次年度使用額が生じた
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Research Products
(7 results)