2020 Fiscal Year Research-status Report
Aeromonas属菌のbiofilm形成における分子メカニズムの解明
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20K16255
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
清家 総史 広島国際大学, 薬学部, 助教 (90806275)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Aeomonas / Biofilm / OMVs / 感染 / 病態 / バイオフィルム / 外膜小胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aeromonasは河川や汽水域に広く棲息するグラム陰性桿菌で,食中毒起因菌に指定されている.しかし,癌や肝硬変などの基礎疾患保有者において,四肢の壊死を伴う劇症型感染症例も多く報告されている.このような劇症型感染症の治療法は確立されておらず予後も不良となるケースが多い.本研究課題では,難治化病巣や感染源にしばしば形成されるbiofilmに注目し,その形成メカニズムを探ることで本菌の劇症型感染症の予防あるいは治療戦略の確立を目指す. これまでの検討により,Aeromonasが形成するbiofilmの細胞外マトリックス中に,菌から遊離された外膜小胞(Outer membrane vesicles : OMVs)が多く含まれることを見出した.そこで,本菌のbiofilm形成に対してOMVsがいかなる影響を与えるのか解析した.その結果,OMVsの処理濃度依存的に本菌のbiofilm形成を促進していることが明らかとなった.次に,OMVsのどの成分がbiofilm形成に重要であるか検討を進めた.Proteinase K (PK)をOMVsに処理し,OMVsの膜表面上のタンパク質を分解したOMVs (PK-OMVs)を作成し,PK-OMVs存在下での本菌のbiofilm形成を観察した.その結果,PK-OMVs存在下では,biofilm形成能がcontrolと同程度まで低減した.このことは,OMVsの膜表面タンパク質が本菌のbiofilm 形成に寄与することを示唆している.さらに,biofilm形成力の異なる菌株において同様の実験を行うと,biofilm形成力に比例してOMVsのbiofilm形成能が変化することを見出した. 従って,biofilm形成能力を獲得したAeromonas株は、菌体外へOMVsを遊離させることで,biofilm形成をさらに増強させるのではないかと考察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、Aeromonasのbiofilm形成の促進に菌体外に遊離されたOMVsが寄与することを明らかにし,OMVs表層に局在するタンパク質がその作用に重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた.本研究課題では,先ずAeromonasのいかなる因子がbiofilm形成に関与しているのかを明らかにすることを目指していたので,予定通り研究を進行させることができていると自己評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
Aeromonasのbiofilm形成にOMVsが関与し,OMVs表層のタンパク質がその機能発現に寄与するのではないかと考察されたので、現在は,本菌のbiofilm形成におけるキー分子として考えられるタンパク質の同定作業に着手している. さらにOMVsが本菌のbiofilm形成に影響した際には,細菌間相互作用や宿主-細菌間相互作用をはじめ,様々な生理的変化が菌体内で生じていることが想定できる.この仮説に基づき,本年度はOMVsが作用した後の菌体内での遺伝子発現の変化を解析することに着手している.一方,OMVs自身がbiofilm形成のみならず感染部位において直接的に宿主への病態形成に寄与する可能性も視野に入れ,種々の培養細胞をモデルに産生されたOMVsの細胞毒性に関しても同時に検討を進める.これらの解析により,本菌のbiofilm形成から感染症の劇症化までの一連の過程を明らかにできると考えている.今後の検討は以下の方針に従い,研究を遂行する.
1) Biofilm形成に関わる遺伝子発現量の変化を,real-time PCR法等を用いて定量解析し,細菌間相互作用におけるOMVsの役割について検討を行う.
2) 緑膿菌においてbiofilm由来,浮遊菌由来のOMVsでは含有タンパク質が異なることが報告されている.その場合,両OMVsで細胞毒性や細胞に対する作用メカニズムが異なることが予想される.そこで,感染後の病態とOMVsの関係を明らかにするため,初期自然免疫に関わるマクロファージ系の細胞を使用し,biofilm由来,浮遊菌由来のOMVsの細胞毒性の比較,緑膿菌において得られている知見とも比較し検討を行う.
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により,研究機関の短縮・研究試薬の納期の遅れ等で研究の進行が遅れ,締日までに全額消費できず残額が生じた.しかし,結果的にこの数ヶ月で研究の遅れは取り戻せた上,順調に進行中であるため,次年度(2021年度)に有効活用する予定である.具体的には,論文の投稿費用や試薬の購入費用に充てる予定である.
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Research Products
(11 results)