2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K16283
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小池 拓矢 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (10855456)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 記憶B細胞 / 胚中心 / ニッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
ワクチン接種による感染防御の主体は、中和抗体の産生である。この抗体は初回感染またはワクチン接種の時に形成された記憶B細胞が再感染時に迅速に増殖したのち抗体産生細胞に分化することで供給される。記憶B細胞は長期に生存することで、生体を感染症から守っているが、どのようにして記憶B細胞の生存が担保されているかは未だ明らかではない。申請者は記憶B細胞が生存するためのニッチが存在するのではないかと仮説を立てた。本年度は記憶B細胞の生存に重要なBAFFの解析に焦点をあてて研究を行った。 申請者はこれまでに、記憶B細胞の生存にBAFFが重要であることをERT2-Cre BAFF-R floxマウスを用いて明らかにしている。そこで、BAFF-RFPマウスを用いて、脾臓におけるBAFF発現細胞を調べた。脾臓で最もBAFFを発現している細胞は好中球であり、樹状細胞やCD169+マクロファージ、濾胞性ヘルパーT細胞もBAFFを発現していた。 BAFF発現細胞を解析するために抗BAFF抗体で染色したところ、興味深いことに、B細胞の表面にBAFFが高レベルで結合していることがわかった。さらに、BAFFの表面の結合レベルは、胚中心B細胞と比較して、記憶B細胞において高いことがわかった。これは、BAFF欠損マウスの解析で、記憶B細胞は減少するが、胚中心B細胞は変化がなかったという結果と一致する。 また、BAFF-Rの発現を比較したところ、胚中心B細胞と記憶B細胞に発現の差はなかった。一方で、もう一つのBAFFの受容体であるTACIは胚中心B細胞と比較して記憶B細胞で高かった。今後はTACIも研究対象に入れて解析していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は記憶B細胞の生存因子であるBAFFに注力して解析しており、当初予定していたBAFF発現細胞の同定に至った。また、ケモカイン受容体側においても、ERT2Cre CXCR3 floxマウスやERT2Cre EBI2 floxマウスの作製など次年度に向けた準備ができているため、予定していた通り、順調に実験計画は進んでいる。 また、記憶B細胞において、当初計画していなかった、BAFFのもう一つの受容体であるTACIの発現上昇が見られたので、新たな解析対象として今後解析していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はBAFF発現細胞を同定したので、好中球を抗Ly6g抗体で、樹状細胞をCD11c-DTRマウスで除去することで、これらの細胞が記憶B細胞の生存に重要であるか調べる。また、ERT2Cre BAFF floxマウスを用いて、リガンド側の欠損マウスでも記憶B細胞が減少するか確認する。さらに、BAFF発現細胞で、かつ、その細胞の除去により記憶B細胞が減少した細胞において特異的にBAFFを欠損したマウスを作製し解析する。さらに、今年度に新たに重要性が示唆されたTACIのfloxマウスを作製し、解析対象に加える。 また、今年度に作製したERT2Cre CXCR3 floxマウスやERT2Cre EBI2 floxマウスを解析し、記憶B細胞の減少が観察できるか調べる。
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