2020 Fiscal Year Research-status Report
扁平上皮癌の進展におけるセロトニンシグナルの機能解析
Project/Area Number |
20K16315
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
岡崎 章悟 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (20784044)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / セロトニン / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主に、セロトニンシグナルRNAの阻害が口腔扁平上皮癌の進展に及ぼす影響の検討を行った。公共データベース解析において、口腔辺鄙上皮癌において高発現が認められたセロトニン受容体HTR7に着目し、口腔扁平上皮癌細胞株を用いたその機能解析を行った。 HTR7をノックダウンした後、免疫不全マウス皮下へ細胞株を移植したところ、コントロール細胞と比較し、顕著な腫瘍体積の低下が認められた。また、腫瘍組織を採取し、蛍光免疫染色による分化度の評価を行ったところ、HTR7ノックダウンによる未分化マーカーCD44vの発現低下と分化マーカーインボルクリンの発現亢進が認められ、HTR7の機能阻害が口腔扁平上皮癌の分化を促進する可能性が示唆された。HTR7が口腔癌の未分化性維持に寄与するか検討するため、In vitroにおける分化誘導実験を行ったところ、HTR7ノックダウンによる分化マーカーの発現亢進が認められた。以上のことから、HTR7は口腔扁平上皮癌における未分化性にかかわることが示された。 さらに、HTR7の発現解析の結果より、HTR7は定常状態の口腔扁平上皮癌においては発現が低いが、分化初期に発現誘導されることが明らかとなった。このことから、HTR7は口腔癌分化初期に発現し、細胞分化に対して抑制的に働く、Negative feedback様の作用により分化を制御する可能性が示唆された。 また、HTR7の標的遺伝子を探索するため、RNA sequence解析による遺伝子発現解析を行った。その結果、HTR7ノックダウンにより、炎症関連遺伝子の発現低下が認められた。以上のことから、HTR7は炎症シグナルの制御により、口腔扁平上皮癌の分化を制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は口腔癌の進展におけるセロトニンシグナルの影響を検討し、また、セロトニンシグナルが腫瘍の進展に影響を及ぼすメカニズムの解明を主な目的として研究を進めたが、HTR7の機能阻害が腫瘍成長を顕著に抑制すること、また、HTR7が分化を抑制することを見出すことができた。また、HTR7の制御を受ける遺伝子群についてもすでに同定していることからも、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はHTR7が分化を制御するメカニズムをより詳細に解析するため、RNA-sequence解析において同定された、HTR7関連遺伝子群を中心に、口腔扁平上皮癌分化に及ぼす影響を検討する。また、生体レベルでのHTR7の機能を解析するため、HTR7ノックアウトマウスの作製に着手する。
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Causes of Carryover |
動物実験において当初の計画より少ない個体数の使用で十分なデータが得られたため、少額の次年度使用額が生じた。2021年度は動物実験を多く計画しているため、次年度における実験動物費用として使用し、より詳細な生体レベルでの解析を行う。
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Research Products
(4 results)