2020 Fiscal Year Research-status Report
新規in vitro共培養系を用いた脳転移微小環境を形成する細胞間相互作用の解明
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20K16327
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石橋 公二朗 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (10847601)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳転移微小環境 / グリアネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、転移性脳腫瘍において重要な役割を果たすと考えられているアストロサイトの活性化がどのようなメカニズムで引き起こされているのかを明らかにする。特に、がん細胞存在下におけるアストロサイトと周囲のグリア細胞の相互作用に着目して解析を行うことにより、脳微小環境における細胞間相互作用をターゲットにした転移性脳腫瘍の治療法の開発を目指す。 2020年度は、申請者が開発したグリア細胞の新規培養法(MGS法)を用いて様々な解析を行った。その結果、MGS法でがん細胞を共培養すると、MGS法におけるがん細胞の増殖能力がマウス脳内での増殖能力と非常に強く相関していること、並びにMGS法でがん細胞を培養し続けることにより、がん細胞がin vivoにおいても脳転移指向性を獲得することが明らかになった。このことは、MGS法はグリア細胞の性質を長期間維持するだけではなく、脳転移微小環境を模倣していることを示している。 さらに、このMGS法を用いて転移性脳腫瘍におけるアストロサイトとミクログリアの相互作用を解析したところ、ある特定の条件においては、本来ミクログリアの味方であるはずのアストロサイトがミクログリアの活性化を抑制してしまうことで、ミクログリアのがん抑制性が発揮されなくなってしまうことを明らかにした。現在、このアストロサイトとミクログリア間のグリアネットワークがどのようにして破綻してしまうのか、その分子メカニズムを薬剤スクリーニングやsingle cell RNA-seqにより解析しており、膜型受容体やリン酸化酵素など様々な候補分子の同定に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者が開発したグリア細胞の新規培養法(MGS法)を用いた解析を行った結果、当初予期していなかった新たな知見を得ることができた。さらに、当初の計画通り、アストロサイトとミクログリアのネットワークを制御する候補分子を複数同定することに成功しているため、順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、転移性脳腫瘍におけるアストロサイトとミクログリアのネットワークを制御する分子を薬剤スクリーニング等を行うことで明らかにしていく。さらに、がん細胞の出現により、アストロサイトやミクログリアの性質がどのように変化しているのかについてsingle cell RNA-seqを行うことで検討していく。 これらの解析を行うことで、がん細胞ーアストロサイトーミクログリアのネットワークを統合的に明らかにしていく。
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