2021 Fiscal Year Annual Research Report
癌関連線維芽細胞におけるサイトカイン制御因子を標的とした新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K16352
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
塚越 真梨子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60781317)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 癌関連線維芽細胞 / 肝癌 / 癌微小環境 / GPR68 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、癌の微小環境における癌細胞と間質との相互作用の重要性が報告され、治療標的として注目されている。我々は癌間質の主な構成要素である癌関連線維芽細胞(CAF)に注目し、これまでに肝癌CAFの活性化をConophyllineが抑制すること明らかにした。Conophyllineによりサイトカイン産生が抑制され、その制御にその制御にプロトン受容体の1つであるG protein-coupled receptor 68(GPR68)が関与する可能性が示された。本研究ではGPR68に注目して肝癌の進展および免疫抑制環境構築に与える影響を検討し、癌微小環境におけるGPR68の制御による新たな治療戦略を開発することを目的とした。 これまでの研究では、ヒト肝癌切除標本より樹立したCAFを用いて、in vitroにおいて機能解析を行った。その結果、肝癌CAFにおけるGPR68は、細胞培養液の弱酸性刺激により発現量が変化し、CAF増殖能の変化を認めた。またGPR68をsiRNAで抑制すると、サイトカイン産生能が抑制されることが明らかとなった。さらにGPR68抑制による肝癌細胞の機能解析を行ったところ、GPR68を抑制すると、CAFによる肝癌細胞増殖抑制効果および浸潤促進効果が抑制された。これらの結果から、GPR68によるサイトカイン分泌制御作用により、肝癌CAFの活性が抑制され、肝癌の発現あるいは進展が抑制できる可能性が示された。 肝癌CAFを弱酸性環境下で培養するとサイトカインIL-6およびIL-8の産生が増加した。このことから、弱酸性環境下では肝癌CAFのGPR68発現が増加し、サイトカインIL-6, IL-8の産生が増加することによって、CAFが活性化し増殖能、浸潤能が促進される可能性が考えられた。肝癌CAFにおけるGPR68発現部位を肝癌切除標本およびin vitroにて検討した結果、GPR68は肝癌CAFの細胞膜上に存在しており、酸性環境下で発現が増加することが明らかになった。 肝癌においてGPR68は新たな治療ターゲットとなる可能性があり、今後さらなる解析をすすめていく。
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