2023 Fiscal Year Research-status Report
併存する不安症を起点とした自閉スペクトラム症の新たな病態解明
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20K16625
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
石塚 佳奈子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90801449)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ADHD / 多剤併用療法 / うつ病 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はNDBサンプリングデータセットを用いて2つの解析を実施し,以下の知見を得た。 1. 2019年10月のNDBデータを対象に,ADHD薬の処方を受けた成人に対して処方されている向精神病薬の数と薬効分類別の頻度を明らかにした。20代の患者では抗不安薬/催眠薬,抗うつ薬,抗精神病薬が同程度の頻度で併用されていたが,30歳以上の患者では抗うつ薬と抗不安薬/催眠薬の併用頻度が特に高かった。 2. 2015年10月、2017年10月、および2019年10月のNDBサンプリングデータを基に,年齢層別のADHD薬の処方された人数と多剤使用状況を分析した。各年齢層におけるADHD薬の処方頻度は増加傾向にあるものの,先行研究で予測されるADHD患者数に比べて著しく低い数値であり,日本における未治療の患者層の存在がうかがえた。多剤併用割合は概ね10%程度だが,18歳未満の群で,2019年の多剤併用割合が約20%に増加していた。 上記に加えて,うつ病の重症度評価の均てん化を目指し,機械学習アルゴリズムベースのモデルを用いたAI-MADRS(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale)推定システムの信頼性評価を行ない,平均推定モデルは熟練した精神科医に匹敵するほどの信頼性を示すことを明らかにした。さらに,うつ病患者の治療中断行動について調査を行い,563人の初診患者のうち32.7%が1ヶ月以内に治療を中止したこと,中断のリスク因子はICD-10 F4の診断と初診時の自己申告によるADHD関連症状の少なさであることを報告した。
最終年度に当たる今年度は,2020年,2021年,2022年のNDBサンプリングデータセットを追加してコロナ禍の薬物療法の変化を明らかにする。5年間の成果や既報とすり合わせて,解明するべき課題や方向性を見出したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍に伴い,研究方法を当初の予定から大幅に変更し,研究期間を延長した。NDBサンプリングデータセットを用いて新たな視点に基づいた解析を実施することができただけでなく,機械学習を用いたうつ病重症度評価ツールの開発やうつ病患者の外来通院における中断要因を明らかにする研究が実施でき,神経発達症や不安症の病態に迫ることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年以降のNDBサンプリングデータセットを追加して解析を実施し,精神科診療の実態を明らかにする。また,今後の臨床研究において不可欠である病態評価の均てん化を目指し,機械学習の実用性を探究していく。
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Causes of Carryover |
NDBデータ提供に伴う手数料が想定より少なかったため。
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