2022 Fiscal Year Research-status Report
心拍変動・瞬時心拍変動に着目した向精神薬による精神疾患患者の突然死予防戦略
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20K16676
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
岡安 寛明 獨協医科大学, 医学部, 講師 (80459619)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心拍変動 / Deceleration capacity / 心臓死 / 統合失調症 / 気分障害 / QT間隔 / 抗精神病薬 / 抗うつ薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
文書にて同意を得られた統合失調症患者138名(男性75名、年齢53.9±13.9)に対して、心拍センサ(my Beat ウェアラブル心拍センサ/WHS-1:ユニオンツール株式会社)を用いて10分間心拍を測定し、RRI Analyzer(同社)を用いて、心機能の予備能をより強く反映するとされる瞬時心拍変動の減速能(Deceleration capacity:DC)を可能な限り測定条件をあわせて計測した。DCの平均値は4.44 (±2.69)msであった。また、得られた結果と患者の年齢、性別、Body Mass Index、QT間隔、内服内容との関連を重回帰分析で検討した。年齢(p<0.001)と抗精神病薬の投与(p<0.001)が用量依存性にDCを減少することが示され、個々の抗精神病薬では、クロルプロマジン(p<0.01)、オランザピン(p<0.001)、ゾテピン(p<0.05)、クロザピン(p<0.001)が用量依存性にDCを減少させることが確認された。さらにこれまで致死的不整脈の予測因子として用いられていたQT間隔とは関連を認めないことがわかり、DCは心機能を評価するうえで、QT間隔とは異なった独自の因子として用いられる可能性があることが示唆された。また、文書にて同意を得られた健常者からも同様の手法でDCを測定し、年齢、性別を調整した統合失調症患者86名と健常者86名でDCを比較検討し、抗精神病薬内服中の統合失調症患者は心機能の予備能が低下しやすいことが示された。この結果を英語論文としてまとめ、General Hospital Psychiatryに掲載された(2023.3)。現在、抗うつ薬など内服している気分障害患者のDCを測定することも開始しており、これまでに文書にて同意を得られた気分障害患者90名から、同様の手法でDCの測定を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに130名以上の統合失調症患者から、Deceleration capacity (DC)を測定して、抗精神病薬や心電図QT間隔との関連を検討し、また、80名以上の健常者からもDCを測定し、統合失調症患者のDC値と比較検討し、その結果を英語論文として報告することができた。さらに90名の気分障害患者からもDCを測定し、経過を学会で報告していることから、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、Deceleration capacity (DC)測定を継続し、症例数を増やし、向精神薬の内服量や、QT間隔との関連の有無について比較検討していく。また、得られた結果を英語論文にまとめ、評価の高い英語論文雑誌への投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
論文投稿費用として計上していたが、本年度に掲載された論文において、投稿費用が必要でない雑誌社に掲載されたため、次年度使用額が生じた。未使用額は、次年度におけるDCの測定器具の購入や、論文投稿費としてその経費に充てることとした。
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